第4鉄 GWは箱根へ――目指すはケーブルカーとソフトクリーム杉山淳一の+R Style(1/2 ページ)

» 2009年04月30日 20時45分 公開
[杉山淳一,ITmedia]

 アイスクリームは冬に売れるそうだ。確かに暖房の効いた部屋で食べるアイスクリームはうまい。しかし、部屋の中だけではなく、外で食べるアイスクリームも格別だ。とくに今ごろの季節、ちょっと強めの陽射しに照らされ、涼しい風に冷まされる。こんな時期は景色のいい場所でアイスクリームを食べたいぞ。

 ……よし、ゴールデンウィークは箱根に行こう!(え、なんで?)

登山鉄道もロープウェイもケーブルカーも、遊覧船まである箱根

 箱根といえば関東有数の保養地。鉄道ファンなら登山電車がまず思い浮かぶ場所だ。新宿から小田急ロマンスカーで箱根湯本駅へ、そこから箱根登山鉄道でよっこらしょと登っていく。強羅からはケーブルカー、ロープウェイで芦ノ湖へ。遊覧船で湖を渡れば、今年3月に復元されたばかりの箱根の関所を見物できる。

 関所を通ったからには後戻りはしない。熱海行きのバスに乗れば、その道のりは十国スカイラインだ。尾根伝いに海へ向かうバスの車窓も絶景なり。熱海からは東海道本線で帰京。そんな回遊プランができるところも箱根の魅力だ。

箱根名物・芦ノ湖を行き交う遊覧船。このほかにもさまざまな乗り物があるのが箱根の魅力(左)。復元工事が終了した箱根の関所(右)

箱根登山ケーブルカーは日本唯一の規模

 上に挙げたルートでは、2つのケーブルカーを楽しめる。1つは箱根登山ケーブルカー、もう1つは十国峠ケーブルカーだ。ケーブルカーを「鉄道に似ているけれど、鉄道ではなく観光地のアトラクションだ」と思う人は意外と多いらしい。確かに一般の鉄道にはない急勾配を走るし、車両に動力はなく、井戸のつるべのような仕組みで動く。しかし仲間外れにしてはいけない。現在活躍しているケーブルカーは鉄道事業法の認可を受けた鋼索(こうさく)鉄道、れっきとした鉄道である。関東では観光路線ばかりだが、関西では通勤客が利用し、通勤定期券を販売するケーブルカーもあるという。

強羅から早雲山までを結ぶ箱根登山ケーブルカー。2両編成のケーブルカーは少数派だ

 箱根登山ケーブルカーは1921(大正10)年に開業した。関東でもっとも歴史のあるケーブルカーである。全国にケーブルカーが23路線あるなかで、箱根登山ケーブルカーの特徴は「2両連結」と「途中駅」だ。

 ケーブルカーというと、1両編成の車両が2つの駅を行ったり来たりする様式が多いのだが、2両編成で、しかも途中に駅があるケーブルカーは箱根登山ケーブルただ1つ。しかも中間駅が4つもあり、駅数では日本一である。箱根という土地の規模と、隅々まで開発されていることが良く分かる。箱根登山ケーブルの車両は冷房付きで、私のような汗かきにはとても嬉しい。

 箱根登山ケーブルカーの楽しさは途中駅の停車にある。つるべ式※のケーブルカーは、常に吊られている状態なので、停止する瞬間にちょっとだけ前後に揺れる。斜めにしたエレベーターのような感じで、これは一般の鉄道にはない感覚だ。ケーブルカーは上りと下りの所要時間がまったく同じで、すれ違いポイントは路線の真ん中に作る。だから、途中駅もすべて等間隔に設置しないと、2つの車両が同時にホームに停まれない。停車時にこちらの車両に乗降がなくても、相方の乗降が長引くとじっと待つほかない。しかしその間の静けさがいい。鳥の声、風の音。つかの間だが、のんびりした時間が流れていく。

※つるべ式……ケーブルカーは、車両に結びつけた鋼索(ケーブル)を巻き取ることによって走る。ケーブルの巻き取り方によって、「つるべ式」と「循環式」に分けられる。
すれ違いポイントの向こうに停車中の相棒が見える(左)。ロープウェイから大涌谷を眺める(右)

 箱根登山ケーブルの惜しいところは車窓だ。沿線に建物が多く、木立の向こうに旅館や研修施設などが見え隠れする。地方私鉄の終点付近とあまり変わらない。だからこそケーブルカーは普通の鉄道だと言えるが、勾配が急だからケーブル方式にしただけですよ、という感じだ。もともとケーブルカーは森の中を走る路線が多く、下方向の景色以外は期待できない乗り物である。そのぶん、早雲山駅から先のロープウェイが大涌谷の光景をたっぷり楽しませてくれる。

箱根ロープウェイ
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