渋谷―羽田アクセス線対決! 東急が「蒲蒲線」に前向きになった理由杉山淳一の時事日想(1/6 ページ)

» 2014年09月12日 08時00分 公開
[杉山淳一Business Media 誠]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP


 最近、羽田空港アクセス関連の新路線が話題になっている。JR東日本が旧貨物線を経由し、新トンネルを掘り、りんかい線と直通する新路線を提案、東京モノレールも東京駅延伸構想を掲げた。そして9月に入って、東急電鉄が「蒲蒲線」に東京メトロ副都心線と直通運転を実施する構想を発表した。

photo 新空港線「蒲蒲線」の構想(出典:大田区公式サイト)

 なぜ、羽田空港関連の新路線の話題が続いているのか。その理由は二つある。一つは「少子化傾向が続く中で、需要増が見込める案件だから」である。もう一つは、今、国土交通省の交通政策審議会において「東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会」が開催されているからだ。この委員会は2015年度までに各方面の意見をとりまとめて、整備すべき鉄道路線の優先順位を定め、国土交通省に答申する予定である。

 交通政策審議会の答申に採用されると、新路線の計画や既存路線の改良について「お墨付き」が与えられ、事業化しやすくなる。ちなみに近年の首都圏の新路線や複々線化などは、2000年の「運輸政策審議会答申第18号」(関連リンク参照)に基づいて実施されてきた。運輸政策審議会は運輸省当時の組織で、国土交通省になって交通政策審議会が役務を引き継いでいる。

 新路線を作りたい鉄道会社や、新路線を誘致したい自治体は、交通政策審議会のお墨付きがほしい。だから積極的に審議会に出席し、構想をアピールする。今(2014年9月現在)は同審議会が羽田空港関連について意見聴取を実施している。だから羽田空港関連の話題が続いている。今後は他の地域も、例えば大江戸線の延伸計画や、江東区が提案する地下鉄計画なども議題に上がるだろう。新路線に期待する鉄道好きにとってはワクワクする日々が続く。ニュースチェックが楽しくて仕方ない。

photo 「蒲蒲線」構想略図(筆者作図)。大田区の構想では環八地下と国道15号の交差点付近に南蒲田駅を設置する計画だった。一方、東急案は京急蒲田駅直下に設置して乗り換えの便宜を図る
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