航空業界へ参入したヘビメタ界の巨人に学ぶ、ビジネスで成功する戦略人に話したくなるコラム(1/3 ページ)

» 2014年08月29日 08時20分 公開
[藤井薫,Business Media 誠]

人に話したくなるコラム:

 いつでも簡単に世界中の情報を手に入れられる便利な時代になった今、逆に情報の波にのまれてしまっている人も多いはず。だからこそ、世の中に溢れる話題豊富で知的好奇心をくすぐるモノに目を凝らし、センスを磨けるような情報を深く探る――。


著者プロフィール:

藤井薫(ふじい・かおる)

 大学を卒業後、広告代理店や出版社を経てライターに。

 『POPEYE』『an・an』(マガジンハウス)や『GLAMOROUS(グラマラス)』(講談社)などで、ファッション、ビューティ、ビジネスなど幅広い記事をカバー。日本と海外を頻繁に行き来して、海外トレンドを中心に情報発信している。

 そんな思いをベースに、世界の企業動向や経営哲学をはじめ、それをとりまくカルチャーやトレンドなどを中心にして、思わず誰かに言いたくなるようなネタを提供していくコラムです。


Iron Maiden』(アイアン・メイデン、Sony)

 相次ぐ飛行機事故や経営破たんなど、ビジネスの難しさが浮き彫りになっている航空業界。そんな航空業界もネガティブな話ばかりではない。

 ニッチなサービスにフォーカスして注目を浴びている会社がある。その会社とは、音楽業界から航空業界に乗り込んだ英国の「新参者」だ。といっても、ヴァージン・レコードやヴァージン・アトランティック航空を立ち上げたリチャード・ブランソンのことではない。創業者が、英国人で音楽業界出身という点は同じなのだが……。

 世界的に有名なヘビメタバンド「アイアン・メイデン」のリードボーカル、ブルース・ディッキンソンが2012年に立ち上げた、航空機のリース会社「Cardiff Aviaion(カーディフ・アビエーション)社」だ。同社は業界でも評判が高く、ディッキンソンは2013年に開催されたルフトハンザ航空の50周年記念行事で、基調演説を行ったほど注目されている。

 一見、何のつながりもないように思える音楽業界と航空業界だが、ビジネスを成功に導くシンプルな法則があるという。ディッキンソンとブランソンが共に航空業界に参入したときにとった戦略は、「徹底的に目立つこと」と「人にフォーカスしていること」。これは航空業界だけでなく、ビジネスに新規参入する場合にきっと参考になるだろう。

 ディッキンソンのカーディフ・アビエーション社は、サウスウェールズを拠点に航空機のリースや機体整備、パイロットの育成などを行っている。英国空軍の元整備施設をそのまま利用しているため、設備の広さと機能性は申し分ない。まだ立ち上がったばかりのベンチャーだが、ビジネスも順調で数年以内に航空機を10機ほど増やす予定もある。さらに、業界用語でウェット・リースと呼ばれる航空機、機体整備、パイロットをまとめてリースする形態をスタートさせる計画が進行中だ。

 しかもアイアン・メイデンの一員として世界をツアーで巡るディッキンソンは市場の動向をいち早く察知している。そして彼は、「アジアや中東は、これから航空機のニーズが高まるだろう」と予測しており、規制緩和が行われている日本の航空業界に乗り込んでくる日もそう遠くないかもしれない。

ブルース・ディッキンソンが立ち上げた、航空機のリース会社「カーディフ・アビエーション」社(出典:カーディフ・アビエーション)
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