日本よりも海外で注目される「タイ代理出産問題」、報道姿勢に大きな違い伊吹太歩の時事日想(1/3 ページ)

» 2014年08月21日 08時00分 公開
[伊吹太歩,Business Media 誠]

著者プロフィール:伊吹太歩

出版社勤務後、世界のカルチャーから政治、エンタメまで幅広く取材、夕刊紙を中心に週刊誌「週刊現代」「週刊ポスト」「アサヒ芸能」などで活躍するライター。翻訳・編集にも携わる。世界を旅して現地人との親睦を深めた経験から、世界的なニュースで生の声を直接拾いながら読者に伝えることを信条としている。


 今、日本のメディアを騒がせている国際的なニュースと言えば、実業家の日本人男性(24)が、タイで代理出産によって少なくとも21人の子供を作っていた、という騒動だ。

 ただこの件は不可解なことがあまりに多い。香港に暮らすというこの日本人男性が何ら発言をしていないことや、そもそも大勢の子供を産ませていただけで、現時点では目的が何だったのかも分からない。

 そんなことからも、日本の報道番組を見ているだけではよく分からないという印象を受けている人も多いのではないか。メディア受けしそうなこの騒動は、ワイドショーや週刊誌などが精力的に取材をしていると聞いており、これからさまざまなアングルの記事が出てくる可能性もある。

 先日、タイ事情に詳しい人物にこの事件の反応を聞いたところ、この騒動は日本のみならず、タイ国内や周辺国でも話題のニュースとして取り上げられているという。しかも日本と違って“直球”で報じているらしい。現地など日本国外の報道では、この事件はどう扱われているのか。英字紙を中心に調べてみた。

海外では実名報道、パスポート写真まで公開

 タイで最も歴史の古い英字日刊紙のバンコク・ポストは、この騒動を大々的に取り上げている。しかも当局が、この日本人男性に対して人身売買の疑いで捜査を行っていると報じており、この男性を実名で報道し、パスポート写真まで容赦なく掲載した。日本とは異なり、多くの情報がオープンにされている。

 タイではこの騒動発覚の直前に、タイの代理母に出産させた双子のうち、1人がダウン症候群だったために、オーストラリア人夫婦が受け取りを拒否した疑惑が浮上して大騒動になっていた。この件によって、代理出産のクリニックなどの調査を強化していた当局が、コンドミニアムからこの日本人男性が産ませたと思われる子供を発見するに至ったのだった。

photo バンコク・ポスト紙に掲載された記事

 軍事政権下にあるタイでは今、このオーストラリア人のケースを受け、代理出産の法律を厳格化しようとする動きがある。これまでも商業的な代理出産は違法だったが、ほとんどが不問にされてきた。ほかの国と比べて安価であるために、主に台湾や香港、オーストラリアなどの富裕層が代理出産のためにタイに集まっていたのだ。

 軍政の法案では、商業的な代理出産に関与して有罪判決を受けた場合、最高で禁錮刑10年を科すことになる。そんな状況下で今回の騒動が起きただけに、タイ当局も日本人男性の騒動には多大な興味を示している。

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