元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。アイティメディアのONETOPIでは「ディズニー」や「博物館/美術館」などのキュレーターをこなしつつ、自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め日々試行錯誤中。
「エマ・ワトソンがアリエル役をやるんだって!」――そんなツイートが大量に見つかりました。結論からいうと、これはさまざまな情報が重なった結果生まれたデマ。やはりTwitterはデマに弱いようです。
実はこの「リトル・マーメイドの実写版でエマ・ワトソンが主役のアリエル役を演じる」という話は、米国で2014年3月にまん延していたデマ。発生の経緯は以下のような流れです。
1.2011年にあるファンが「もし有名人が実写化キャストに選ばれたら(参照リンク)」とポスターを作る。このとき、自作であることが分かるように自分の名前を目立つように入れる。
2.2013年4月、その画像を使い、あるサイトがエイプリルフールのネタとして記事化(参照リンク)。製作者の名前を企業ロゴに差し替える。
3.2013年8月、同じ画像から「エイプリルフールではない」タイミングで記事(参照リンク)が公開される。
4.2014年2月、米国でこの画像がTwitter上で拡散される。
5.2014年8月、日本でもTwitterにおいて同種のデマが再度拡散される。
日本で再度まん延したきっかけを調べてみたところ、どうやら2014年7月に公開された、まとめサイトの記事にこの偽ポスターアートが掲載されたからのようです。それを誤読したTwitterユーザーが偽ポスター画像だけを切り取りツイート、そしてリツイート……というのが現状です。
それぞれのステップでは「それほどの悪意がない」のです。デマの発生とまん延はそんな程度のものなのかもしれません。
実は「人魚姫の実写映画プロジェクト」自体は存在していますが、これはあくまでアンデルセンの原作を映画化するもので、主演女優も発表されていません。そもそもこのプロジェクトはユニバーサル・スタジオによるもので、1989年に公開されたディズニーアニメとは無関係です。
ネット上を探すと「それっぽい情報」があることが、ツイートだけでデマを信じてしまう人が後を絶たない状況を生み出しているのかもしれません。
ちなみに、似たような話は2014年5月にもありました。「アナと雪の女王」の続編が2018年に公開されるというデマが、日本でだけ広まったことです(参照記事)。なお、現時点でアナと雪の女王の続編は発表されていません。
これまでも、有名人のゴシップや事件などをたくみに使い「続きはこちら」「衝撃の動画はこれ」というリンク付きメールが登場してきました。その先には悪意のあるプログラムが待っています。今回のまん延はまだ無害なものですが、いつそれが牙をむくかは分かりません。
そのため、TwitterやFacebookなどであやふやな噂がリンクとともに流れてきたとしても、皆さんはぜひ「無視」してください。「クリックする」「RTする」ことは、SNSにおいても危険だと認識するべきでしょう。
センセーショナルな話題がTwitterで上がってきても「調べるだけ時間の無駄」ということがほとんど。正式発表があるまで放置する。これがこれからの正しい大人な姿なのかもしれません。
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