『朝日新聞』をダマした吉田清治とは何者なのか 慰安婦強制連行を「偽証」窪田順生の時事日想(1/4 ページ)

» 2014年08月12日 08時15分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

窪田順生氏のプロフィール:

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。


 朝日新聞が「慰安婦」にまつわる記事を取り消した。

 といっても「テキトーな記事を32年も放置してごめんなさい」とかの謝罪の言葉は一切なし。それどころか、ドーンと紙面を割いて行った検証でも、「慰安婦狩りをした」という吉田清治(文筆家:慰安婦のねつ造を認めて、2000年に死去)の証言のみは誤りを認めるが、他は一歩も引かねえぞと“逆ギレ”のような釈明をしている。

 こうした一部の不正確な報道が、慰安婦問題の理解を混乱させている、との指摘もあります。しかし、そのことを理由とした「慰安婦問題は捏造」という主張や「元慰安婦に謝る理由はない」といった議論には決して同意できません。(『朝日新聞』〈8月5日〉)

 以前この『時事日想』のなかで、「報道」というのは「茶道」や「華道」と同じく厳密な作法があると述べた(関連記事)。それは、いかに頭を下げないでやり過ごすか。世間から叩かれようが、権力者から抗議がこようが、街宣車がワーワー騒ごうが、「取材には自信をもっております」と涼しい顔で切り返す。それこそが「報道」の真骨頂だ。そういう意味では、「さすが家元、けっこうなお手前でした」と唸ってしまうほどの期待を裏切らない記事である。

 この「〜〜という指摘もあります、しかし、〜〜だけは同意できません」という“朝日話法”を使えば、被害回復などの責任問題をウヤムヤにできるうえ、体面も保つことができる。これから謝罪会見などで朝日の社会部記者に厳しく断罪されるような企業はぜひとも参考にしていただきたい。

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