マレーシア機撃墜事件をきっかけに、ロシアのウクライナ侵攻が起こるのか?藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2014年07月23日 07時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


photo ロシアのプーチン大統領(出典:President of Russia)

 5月25日に行われたウクライナの大統領選で注目されていたのは、誰が勝つかというより、選挙結果を受けてロシアのプーチン大統領が何を言うかだっただろう。結局、親EUを掲げるポロシェンコ氏が勝ったが、プーチン大統領は「その結果を尊重する」と語ったのは記憶に新しい。

 そんな微妙な状況で大統領に就任したポロシェンコ氏だったが、周りが予想したよりもはるかに強硬な姿勢を示している。ウクライナ東部で行政庁舎などを占拠し、一部では共和国樹立を宣言した親ロシア派住民の鎮圧を命じたとも言われている(ロシアが併合したクリミアについては国際司法裁判所に持ち込む方針だ)。

 一方のプーチン大統領だが、“妥協的な”姿勢を示したとはいえ、親ロシア派住民(英語などでは分離派とも呼ばれる)を見捨てるはずはない。そんなことをすれば、国内での支持率が下がり、あと10年は務められるであろう大統領職が危うくなる可能性が出てくる。だが、親ロシア派への肩入れを続ければ、欧州による制裁がさらに強化されてエネルギー輸出に支障が出るかもしれない。そうなればロシア経済そのものがおかしくなり、やはり支持を失う可能性がある。

 そういう意味では、プーチン大統領も難しい立場にいた。親ロシア派住民に対して共感を示しつつ、ウクライナ東部の自治共和国化をポロシェンコ政権に認めさせることが当面の目標だったはずだ。

 そこに降って湧いたのがマレーシア機の撃墜事件だ。ロシアは、しきりにウクライナ空軍による撃墜をほのめかしているが、何とか追及をかわそうとする悪あがきとしか見られていないようだ。おそらくロシアから供与されたミサイルで、練度の低い親ロシア民兵が誤射したというのが真相だろう。米国などの情報によれば、そのミサイルはすぐにロシア側に返されたという。

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