結局、オバマと安倍は、仲がいいのか悪いのか?伊吹太歩の時事日想(1/3 ページ)

» 2014年05月01日 08時00分 公開
[伊吹太歩,Business Media 誠]

著者プロフィール:伊吹太歩

出版社勤務後、世界のカルチャーから政治、エンタメまで幅広く取材、夕刊紙を中心に週刊誌「週刊現代」「週刊ポスト」「アサヒ芸能」などで活躍するライター。翻訳・編集にも携わる。世界を旅して現地人との親睦を深めた経験から、世界的なニュースで生の声を直接拾いながら読者に伝えることを信条としている。


 米国のバラク・オバマ大統領が3年半ぶりに日本を訪問した。我らが安倍晋三首相はオバマ氏を最大限の「おもてなし」で迎え入れた。その甲斐あってか、ホワイトハウスが制作した訪日の動画(参考リンク)を見ると、オバマ氏は日本を満喫したようだ。

 しかし、日本側の反応はちょっと違う。TPPという最大の懸案に表向きの進展がなかったためか、オバマ氏の訪日と安倍首相のおもてなしを冷めた目で見ている人が多い気がする(オバマ氏が尖閣諸島を安全保障の対象に明言したことは大々的に報じられていたが)。

ホワイトハウスが制作した訪日の動画

 また、安倍首相も思惑通りに進まなかったのか、オバマ氏に対して愚痴をこぼしているとの報道があった。産経新聞は「麻生太郎財務相や菅義偉官房長官らと東京・銀座のステーキ店で会食した。出席者によると、首相は来日したオバマ米大統領との会談について『仕事の話が多かった』と愚痴をこぼしたという」と報じている(参考リンク)。仲良くなりたいオーラを出しまくったのに、響かなかったということで嘆いているとすれば、恋愛がうまくいかず、落ち込む学生みたいでなんとも情けない。

 TPPなど外交的問題の分析は専門家の方々に譲るが、今回のオバマ氏の訪日をめぐって、こんな疑問を持った人も多いはずだ。「結局、オバマと安倍は仲がいいのか悪いのか?」

とても「冷めている」オバマの外交スタイル

 そもそも、米国を含む海外でもオバマ氏の外交スタイルは「非常に冷めており、他国と距離を置くものだ」と指摘されてきた。さらに大統領候補の時代から、オバマは現実主義者であると分析されており、決して人情派ではなかった。ある著名な米国人ジャーナリストは、オバマ氏に直接「あなたは他国の首脳と仲良くしない」と指摘したこともある。

 こうした見方をベースに、今回のオバマ氏の訪日を振り返るとどうか。

photo 安倍首相のスシ外交は成功したのか……?(出典:首相官邸HP)

 安倍首相がオバマ氏をもてなした場所は、高級寿司店で知られる「すきやばし次郎」だ。欧米メディアでも「スシ外交」などと呼ばれて報じられていたが、日本ではソーシャルメディアを中心に、そのスシ外交について、オバマ氏が安倍首相を軽くあしらったなどとする意見をあちこちで見かけた。

 フランスの通信社であるAFP通信は、驚くような記事を配信した(参考リンク)。「同じ雑居ビルの地下にある焼き鳥店の店主が『次郎』の店員から聞いた話としてTBSに語ったところによると……」というよく分からない情報をもとに、オバマ氏は寿司のコースを半分しか食べなかったと報じた。「大統領は世間話をしたり、すしに舌鼓を打ったりする間もなく、すぐに日米交渉の話を始めた」という。

 いかにもオバマ氏が安倍首相の「おもてなし」に応えなかったと言わんばかりのニュアンスだ。しかし、この報道が事実だとしても、安倍首相のせっかくの招待にオバマ氏が十分に応えなかったということではない。

 もちろん、寿司が口に合わなかったということでもないだろう。「次郎」の前に他店の寿司を出前したなんて話もあるし、食事を残したからといって、好意をないがしろにしたことにはならない。米国人は「今はいらない」ならば、「食べない」のである。そこに感情はない。それを無理強いしないのが、米国流“大人の付き合い”である。

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