「寝台特急あけぼの」を残す、ひとつのアイデア杉山淳一の時事日想(1/5 ページ)

» 2014年02月28日 08時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。


 JR旅客各社は2014年3月15日にダイヤ改正を予定している。それに先駆けて、2月25日に書店でダイヤ改正版の時刻表3月号が発売された。巻頭の色つきページ(JR時刻表は黄緑、JTB時刻表は水色)の末尾に寝台特急が掲載されており、そのなかの寝台特急「あけぼの」の欄には「運転日注意 上野発4月25日→5月6日運転」、「運転日注意 青森発4月24日→5月5日運転」と注釈が付せられている。

 その欄の上に列車番号が記載されている。上野発青森行のあけぼのは「9021」、青森発上野行のあけぼのは「9022」となっている。3月14日まではこの番号が「2021」「2022」だ。列車番号は列車固有の識別番号で、主に鉄道業務上で使われる。一般にはきっぷに記載され、発券時の照合に使うくらいだ。指定席券をよく見ると記載されている。私は普通列車を乗り継ぐときに、列車番号を行程表に記入している。列車名の代わりになるからだ。

2段階格下げとなった「あけぼの」

 列車番号の8000番台と9000番台は主に臨時列車を示す。また、6000番台と7000番台は季節列車を示す。5000番台以下が定期列車となる。多少の例外もあるとはいえ、この番号の付け方で、JRグループのその列車に対する位置付けが分かる。

 季節列車は運行頻度が多く、実際に列車が走らない時期もダイヤには織り込み済みだ。ところが8000番台と9000番台の臨時列車は通常ダイヤには記載されていない。運行するたびに関係各方面と調整し、ダイヤを引く段取りとなる。定期列車、季節列車の隙間を走らせるため、特急と名乗っても時間調整の停車時間が長かったり、単線では逆方向の普通列車に待たされたりする。私の経験では、ダイヤが乱れたときも復旧は後回し、運休の見切りも早い。

 つまり、寝台特急「あけぼの」は、2000番台の定期列車から9000番台の臨時列車へ、2段階の格下げとなっている。JR東日本は今後、「あけぼの」を臨時列車として多客期に運行予定としている。事実、時刻表3月号では春の大型連休時に運行予定となっている。ただし、次のシーズンは確約されていない。そこが準定期列車ともいうべき季節列車との違いだ。

 そして、鉄道ファンや旅行業関係者などでは「あけぼの」について「今後は臨時列車としても運行されないのではないか」という見方が強い。理由の1つは車両の老朽化だ。JR東日本に新型車両を導入する意思がなさそう。もう1つは、過去にも寝台特急の「日本海(大阪―青森)」と「北陸(上野―金沢)」、座席急行の「能登(上野―金沢)」が、臨時列車に格下げされた後に運行が途絶え、事実上の廃止状態という前例があるからだ。

臨時列車に格下げとなる寝台特急「あけぼの」
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