ゴーストライターの私はこう思う、新垣隆さんは「ゴースト」ではない窪田順生の時事日想(1/3 ページ)

» 2014年02月25日 08時00分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

窪田順生氏のプロフィール:

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。


 「偽ベートーベン」騒動のせいで、最近よく周囲から「ゴーストライター」について尋ねられる。

 なぜかというと、私自身この10年あまり、著名人のゴーストライターをちょいちょい務めてきたからだ。国会議員に社長にタレント、プロ野球選手、登山家、大学教授、医師、投資コンサル……変わり種では、女カリスマ社長なんかの代筆をさせていただいたことがある。パッと頭に浮かぶだけでも20人くらいになるだろうか。

 といっても、なにか特殊な裏稼業をしてきたという感覚はない。よく言われることだが、出版の世界ではゴーストなど常識である。

 多忙を極める「売れっ子」になればなるほど落ち着いて本を書く時間などない。いや、なかには時間はあるが、文章が書けないという人もいる。だから、本人の代わりに「聞き・書き」をするライターの出番となる。こういう場合、海外では「共著」になるのが一般的だが、日本の出版文化では「編集協力」などの扱いで表に名が出ない代わり、印税の一部を報酬として頂戴する。

 だから、「アイドルから作家へ華麗に転身」なんて特殊な事情がない限り、当事者同士も隠さない。奥付にクレジットされることもあるし、「あとがき」で著者から謝辞をもらうこともある。ある政治家などは自分の後援会で「この人が私の本を書いてくれている」と私のことを紹介していたくらいだ。

「売れっ子」になればなるほど落ち着いて本を書く時間はない(写真はイメージです)
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