被災路線をあえて手放す、JR東日本の英断杉山淳一の時事日想(1/4 ページ)

» 2014年02月07日 08時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。


 2年前の本欄で、私は「JR東日本は三陸地域から撤退すべきだ」と著した。それがJR東日本のためであり、三陸地域の鉄道復興の早道だと考えたからだ。現状の制度で、国が黒字企業に公的支援をしないという考え方を転換しない限り、鉄道復活に国の支援を導く方法はこれしかない。

 →JR東日本は三陸から“名誉ある撤退”を(関連記事)

 この記事の趣旨は次のとおりだ。

 三陸地域のJR東日本の被災路線について、JR東日本はBRT(バス高速輸送システム)への転換を示唆しているが、地元自治体は鉄道にこだわっている。鉄道として復旧させるにはどうしたらいいか。震災がれき輸送でJR貨物は積極的だ。旅客輸送に限界があり赤字だというなら、あらゆる貨物輸送を鉄道に転換し鉄道を活用するプランを作るべきだ。

 JR東日本は三陸地域の鉄道路線についてJR貨物に譲渡し、線路使用料を払って旅客列車を運行してはどうか。あるいは、JR東日本はこの地域から完全撤退し、三陸鉄道に譲渡したらどうか。これで国の復興支援を受ける条件が整い、地元負担を小さくして鉄道を復活できる。

 この施策で、JR東日本は「赤字路線を切り捨てた」とか「公共交通事業者として社会的責任を放棄した」などと批判されるかもしれない。しかし、JR東日本は関東から東北地域全体、ひいては日本の鉄道輸送に責任を追うべき存在だ。この地域に鉄道を復活させたいなら、国の支援導入のために、あえて身を引くという処し方もある。それは“名誉ある撤退”と賞賛すべき行為のはずだ。

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