マルハニチロはなぜ冷凍食品の異臭を「農薬」と結びつけられなかったのか?窪田順生の時事日想(1/3 ページ)

» 2014年01月07日 08時34分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

窪田順生氏のプロフィール:

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。


 マルハニチロホールディングスの連結子会社「アクリフーズ」の冷凍食品に、農薬「マラチオン」が混入していた事件で、その対応が批判されている。

 『毎日新聞』によると、「石油・機械油のような匂いがする」という苦情が初めて寄せられたのは11月13日(参照リンク)。ところが、問題の冷凍食品が製造された群馬工場が外部の検査機関に分析を依頼したのは3週間後の12月4日。残留農薬の検査にいたってはその2週間後と、対応が遅いという印象が拭えないからだ。

 なんで苦情があった時点で検査に出さないんだよ、と怒りを感じる方もいるだろう。これが口に入れるモノをつくる企業の安全意識かね、と憤る方も多いだろう。

 ただ、もうかれこれ15年くらいさまざまな業界、企業の不祥事を取材してきた身から言わせていただくと、日本企業特有の“悪いクセ”がでたなあという感じで、特に珍しい印象はない。

 こういう仕事をしている関係で、いろんな企業から「実はこんな問題が起きていますが大丈夫でしょうか?」なんて相談を受ける。こちらとしては、これまでの取材経験やら、類似するリスク事例からありとあらゆる可能性を示唆するのだが、そこで気付いたのが、組織外と、組織人の認識のギャップである。

アクリフーズ群馬工場生産品における農薬検出ついて。お客からの問い合わせ状況(出典:マルハニチロホールディングス、アクリフーズ)
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