Q. 故人の荒れ果てたブログを何とかしたいんだけど……古田雄介の死とインターネット 一問一答

» 2013年12月10日 08時00分 公開
[古田雄介,Business Media 誠]

古田雄介のプロフィール:

1977年生まれ。建設業界と葬祭業界を経て2002年にライターへ転職し、テクニカル系の記事執筆と死の周辺の実情調査を進める。ネット上の死の現状をまとめたルポ『死んでからも残り続ける「生の痕跡」』(新潮45eBooklet)を各種電子書籍サイトで販売中。ブログは「古田雄介のブログ」。


 下の画像は、ブログ主が亡くなった後もネット上に公開されたままになっている実際のブログの書き込み欄から取り出したものだ。故人が残した最後の日記や家族が代筆した訃報に下品なコメントとURLが大量に書き込まれ、そのまま何年も放置されている例はひとつやふたつではない。

スパムだらけになったブログ

 こうしたコメントのほとんどはスパム業者によって、なかば無作為に加えられている。なぜスパム業者はこんな空気の読めない書き込みをするのか?

 彼らの目的は、特定のブログに対する嫌がらせではなく、より多くのサイトにURLを貼り付けて直接、間接に報酬を得ることにある。一般的に多くのサイトにリンクされているサイトほど「価値」が高くなるので、プログラムを使ってあらゆるところからリンクを張ろうというのだ。下品な文言は単なる飾りにすぎない。

 スパム業者の視点でみると書き込み制限のないブログは格好の獲物といえるだろう。それも、長年続いて多くの読者を抱えていて、今は管理されていないブログだったら格別だ。人気サイトからのリンクは「価値」をグンと高めてくれるので、好きに収穫できる金のなる木に見えるのかもしれない。

 だが、Googleなどの検索大手サービスはこのような手法でサイトの価値が上がるのを防ぐ手立てを進めた。そのため、スパム書き込みは2009〜10年ごろをピークに落ち着いたといわれている。

 それでもゼロになったわけではない。SEO対策に詳しいあるコンサルタントは「リンクの大半がスパム書き込みならアウトですが、全体の1〜2割程度なら見過ごされるといわれています。現在もSEO対策の補強材料としてスパム書き込み用のプログラムを稼働させている業者は珍しくないでしょう」と語る。

A. 画像認証などの仕組みが導入できれば安心。無理なら運営の対応次第

 スパム書き込みの成り立ちからみても、コメント欄を廃止したり、承認制や画像認証設定を施したりするのが効果的な対策だといえる。それは以前、生前準備の手段としてまとめたとおりだ(参照記事)。持ち主が亡くなった後でも、IDとパスワードさえ分かれば、遺族や友人がログインして適切な措置をとればいい。こうした事情なら大半の運営元は大目に見てくれる。

 では、IDやパスワードが分からない場合はどうなるのか?

 そこはサービスによって対応が異なる。国内の主要な無料ブログサービスに対して、遺族がブログを設定変更する方法について尋ねたところ、現在は主に5とおりのスタンスがあることが分かった。

A:承継タイプ

 残された側にとって最も自由度の高いタイプ。正規の手続きを踏めば、IDやパスワードが正式に遺族のものとなるので、画像認証設定も承認制設定も自由に選べるようになる。BIGLOBE(※2013年から対応)やソネットにように、ブログだけでなく課金タイプを含めたサービス全般で承継を認めている運営元がこのタイプにあてはまる。

B:個別に対応タイプ

 明確な手順は規定していないながらも、身分照会を済ませたうえで個別に対応するというタイプ。AmebaブログやJUGEMなどが該当する。個別対応ゆえにどこまで要望が通るかは分からないが、本題の荒し対策などは善処してもらえる可能性が高い。

C:身分証明不要タイプ

 遺族から要請があったとき、ブログ主のメールアドレスにそのむねを送り、一定期間返信がないときに措置するというタイプ。FC2ブログとはてなダイアリーが典型例だ。FC2ブログは削除と引き継ぎが、はてなブログやはてなダイアリーは非公開設定が依頼できる。また、「状況によりどうしても必要と判断した場合には別途検討します。その際には同様のメールでの照会を経て対応します」(はてな)とのことで、例外措置に応じてくれる可能性もある。

D:削除のみ対応タイプ

 通信の秘密や一身専属性を重視する観点からIDの譲渡や承継を認めないブログサービスも多い。それでもココログやエキサイトブログのように遺族による退会や削除、非公開手続きに応じる例もある。その場合は、ユーザー側も保存したうえで削除するといった手段もとれるだろう。

E:原則非対応タイプ

 Dと同じく譲渡や承継を認めないスタンスで、遺族による削除や退会の道筋も特に用意していないタイプ。ただし、「第三者よりブログの設定変更のお問合せがあった場合、内容等鑑みて対応する可能性がございます」(ライブドアブログ)と、何かしらの対応をしてもらえる可能性はある。ある意味でBに近いかもしれない。

主なブログサービスの対応
ブログ 大筋 概要 相談件数
So-netブログ A:承継タイプ 法定相続人になり得る遺族なら、身分照会の後、会員サービスの譲渡・承継手続きが行える 1年に1〜2回程度
BIGLOBEウェブリブログ A:承継タイプ 配偶者や二親等以内の法定相続人なら、身分照会のうえでIDの名義変更が行える 数年間で数件程度
Amebaブログ B:個別に対応タイプ 契約者と遺族であることを照会したうえで、可能な限り希望に添うかたちで対応する 過去9年で1けた程度
JUGEM B:個別に対応タイプ 契約者と遺族であることを照会したうえで、可能な限り希望に添うかたちで対応する。 1年に数件程度
FC2ブログ C:身分証明不要タイプ ブログの状況を確認後、登録者に確認メールを送付。10日以内に返信がない場合に、削除やIDの開示を実施する。登録メールが不通の際はプライベートモードに設定変更にする。 2013年中に4件
はてなブログ、はてなダイアリー C:身分証明不要タイプ 登録者に確認メールを送り、所定の期間に異議がなければ非公開設定とする 1年に1〜2回程度
ココログ D:削除のみ対応 遺族による退会手続きにより、削除が可能 非公開
エキサイトブログ D:削除のみ対応 「本人確認依頼フォーム」を使って登録者と遺族の身分照会を行う。クレジットカード番号まで合致すれば削除、合わなければ非公開設定とする 1カ月に1件程度
gooブログ D:削除のみ対応 削除依頼については、依頼の都度、検討のうえ個別に対応する 非公開
ライブドアブログ E:原則非対応タイプ 原則としては非対応 非公開
Yahoo!ブログ E:原則非対応タイプ 原則としては非対応 1カ月に数件程度
楽天ブログ ※回答得られず    
Seesaaブログ ※回答得られず    
yaplog! ※回答得られず    
主な国内無料ブログサービスのスタンス。So-netブログは配偶者と子、父母、祖父母、兄弟姉妹が承継対象となる。BIGLOBEウェブリブログの場合は対象に孫も加わる

 こうした措置は多くても「月に数件」で、業界的なスタンダードがまだ存在しない。それだけに打てる対策の幅も運営元によって大きく変わってくるが、取材した限り、「荒らされたままのブログを放置していて平気だ」というスタンスのところはひとつもなかった。もしも家族や知人のブログが悲惨な状態のまま放置されていて、自分では手の施しようがないと諦めている人がいたら、とりあえずは運営元に相談することを勧めたい。

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