出版社勤務後、世界のカルチャーから政治、エンタメまで幅広く取材、夕刊紙を中心に週刊誌「週刊現代」「週刊ポスト」「アサヒ芸能」などで活躍するライター。翻訳・編集にも携わる。世界を旅して現地人との親睦を深めた経験から、世界的なニュースで生の声を直接拾いながら読者に伝えることを信条としている。
世界を震撼させた米国のネット監視システム「PRISM(プリズム)」を覚えているだろうか? 米国家安全保障局(NSA)の監視活動を暴露した元CIA職員のエドワード・スノーデン(参照記事)の名前が、また欧米メディアを賑わせている。
まず、2013年10月11日に発表されたノーベル平和賞の候補になったとして取り上げられていた。結局受賞はなかったが、その数日後、今度はモスクワ市内で話をする彼の最新映像が公表された。現在はロシアで亡命生活を送っているスノーデン。最新映像では彼に変わった様子は見られなかった。
GoogleやApple、Facebookなどに電子メールや個人情報を提供させていたNSAは、その善し悪しにはひとまず目を伏せるとして、安全保障を担う情報機関としてはかなり優秀だ。もちろんやり方はかなり強引だが、その情報収集力はすさまじい。
だがどれだけ情報収集の能力に長けていても、集めた情報は単なる断片にすぎない。膨大な情報を整理し、点と線を結び、分析して現場の作戦に生かすのは簡単ではない。ただそれができれば、ターゲットの情報を丸裸にすることも犯罪を未然に防ぐことも可能になる。
NSAやCIA、FBIといった米政府の情報機関が、それを実現するために頼ってきた企業がある。その名はパランティア・テクノロジーズ(参照リンク)。今、シリコンバレーで最も注目され、最も速いスピードで成長しているスタートアップ企業だ。
パランティアは2004年に5人の男性によって立ち上げられた。中心人物には、決算サービスのPayPalの共同設立者でFacebookにも大規模な投資を行ったことで知られるピーター・ティールがいる。ティールは現在、パランティアの会長だ。
共同設立者で同社の現CEOであるアレックス・カープは、2013年9月にフォーブス誌の表紙を飾り、8ページの特集記事が掲載されたばかりだ。その中でデービッド・ペトレイアス前CIA長官(参照記事)は、パランティアについて「必要とされるいい『ねずみ取り』だ」と語っている。
スノーデンの暴露以来、パランティアが注目されてきた理由は、NSAなど米情報機関に彼らが開発したソフトウェアが採用されているからだ。同社はこれまでも話題にのぼることはあったが、取引相手と扱うサービスの特性から何だか謎めいたよく分からない企業だと見られてきた。そうしたことも、余計に人々が興味を持つ要素になっていた。
パランティアの顧客には、NSA、FBI、CIAだけでなく、ニューヨーク市警などの名も挙がる。民間企業の取引先はあまり明らかになっていないが、例えばバンク・オブ・アメリカ、JPモルガン、IBM、ロッキード・マーティン、さらにスノーデンが勤めていた米セキュリティ会社のブーズ・アレンなどが知られている。
こうした組織がこぞってパランティアに助けを求めているわけだが、同社の事業内容を知ればそれもうなずける。一言で言うとデータマイニングを行うソフトウェアの販売やサービスの提供だ。ありとあらゆるバラバラの情報を収集して分析し、ビジュアルマップやヒストグラム、チャートを作り上げる。しかも情報機関でも時間がかかるこの大変な作業を短時間でやってのける。
情報機関は、諜報活動で得た情報だけでなく、SNSや電子メール、クレジットカード履歴や航空チケット購入記録、監視カメラの映像などの情報を、パランティアのソフトウェアで管理し、監視していると言われる。そしてターゲットなどの言動を分析、あるいは丸裸にして、現実の情報・捜査活動に生かしているのだ。
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