南場智子さんが語る、マッキンゼーの経験が役に立たなかった理由『不格好経営』の著者が伝えたいこと(前編)(1/4 ページ)

» 2013年09月27日 07時05分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 「1999年、マッキンゼーのコンサルタントとして調子よくやっていた私は、何かに取り憑かれたように起業し、それまで順風万帆だった多くの人の人生を荒波に巻き込み、四方八方に迷惑をかけながら失敗のフルコースを片っ端から経験して、DeNAを立ち上げた」――。これはDeNAの創業者・南場智子さんの著書『不格好経営―チームDeNAの挑戦』(日本経済新聞出版社)の一文だ。

 DeNAは、携帯電話向けのオークションサイト「モバオク」などを展開。その後もモバイルサービスを中心に業界を牽引することになるが、2011年、南場さんは突然社長を退任した。夫が病に倒れ、「自分の優先順位が社業から家族に切り替わってしまった」。ただ夫の健康状態が変化し、現在は仕事の時間を増やすことにしたという。

 社長を退任してから2年――。現場から離れて何を感じていたのだろうか。今後のことについて、どんなことを考えているのだろうか。最近の心境を語ってもらった。前後編でお送りする。

※本記事は、9月21日にBBT大学主催で開催された講演会の様子をまとめたものです。

経営者として大切にしていたこと

南場智子さん

――南場さんは1999年にマッキンゼーを辞められましたが、そのときはどんな気持ちでしたか?

南場:なんの未練もありませんでしたね。次のこと(DeNAを起業)で頭が一杯でしたから。そうでないと、私は会社を辞めていなかったでしょうね。それほど気に入っていました。次のことばかり考えていたのでマッキンゼーを辞めたときには、なんの迷いもなく「さよならー」といった感じでしたね(笑)。

――経営者としてどんなことを大切にされていましたか?

南場:「経営にはこれが一番大切だ」といった教科書っぽいものはありませんでした。ただ振り返ってみると、そのとき・そのときの目標に向かってできることはとにかく全部やる――というスタンスでしたね。初めてサービスが出たとき、みんなの喜び方が純粋でした。そういう純粋なみんなと目標を共有して、全力でがんばることを楽しめるチームにしたいなあと思っていました。会社を経営するということは、外(マッキンゼー)からアドバイスをしていたときよりも、ものすごく難しいことが分かりましたね。

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