中国のネット検閲、ハーバードの教授が偽サイトを運営して体験してみた伊吹太歩の時事日想(1/3 ページ)

» 2013年09月26日 06時00分 公開
[伊吹太歩,Business Media 誠]

著者プロフィール:伊吹太歩

出版社勤務後、世界のカルチャーから政治、エンタメまで幅広く取材、夕刊紙を中心に週刊誌「週刊現代」「週刊ポスト」「アサヒ芸能」などで活躍するライター。翻訳・編集にも携わる。世界を旅して現地人との親睦を深めた経験から、世界的なニュースで生の声を直接拾いながら読者に伝えることを信条としている。


Apologies to My Censor 『Apologies to My Censor: The High and Low Adventures of a Foreigner in China』

 中国ではメディアが検閲され、中国共産党が世論をコントロールしている――。そんなイメージは世界中に十分過ぎるほど知れ渡っている。中国に支局を置いて報道を行う欧米の大手報道機関ですら、中央政府が国民に見せたくない報道は、中国国内で見られないようにブロックされる。

 当然のことながら、中国のテレビや新聞といった政府系メディアは直接、検閲されている。そして制作者側には、長年にわたる当局からのマメな指導により「自己検閲」も十分に染み付いている。2013年7月に欧米で出版された中国の検閲についての書籍『アポロジーズ・トゥ・マイ・センサー』では、中華日報のカナダ人元記者が、原稿を最後に書き換えられるといった体験を紹介するなど、中国の検閲事情を明らかにしている。そこには決して抗えない、越えられない編集者や当局による「検閲の壁」があったという。

 中国政府による検閲や指導について、欧米メディアなどから知る機会は少なくない。最近も、ロイター通信が、中国版のTwitterである「微博(ウェイボー)」の検閲を暴露している。強面の共産党政治局員ではなく、普通の大学生が北京に近い天津市近郊でPC画面を見つめ、せっせこと中央政府にとって攻撃的または煽動的だと思われる発言を削除しているという。

 このロイターの記事からも分かる通り、一党独裁を維持するのに必死な中国政府にとって、検閲が根付いているテレビや新聞などよりも、新しいサービスが次々登場するインターネットの統制が大きな課題になっている。政府が2013年9月に入ってから、ネット上で「噂」を広める人を実刑にする検閲強化を行ったのもその現れだ。

 このように、アップされたものを削除するといった検閲についての報道は時々目にする。だが現実に、ネットサービスの運営側が、中央政府からどんな検閲の指導(または規制ガイドライン)を受けるのかはあまり知られていない。ネットメディア側が、検閲の実態についておおっぴらに語らないからだ。

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