バーナンキ議長の後任はやっぱりバーナンキ? 米中央銀行総裁人事の行方藤田正美の時事日想(1/3 ページ)

» 2013年09月18日 06時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


ベン・バーナンキ FRB議長(FRBのWebサイトより)

 ある国の中央銀行総裁人事がこれほど注目を集めたことはなかったに違いない。米FRB(連邦準備理事会)議長人事である。2014年1月に2期8年の任期満了を迎えるベン・バーナンキ議長の後任選び、2013年に入ってからフロントランナーは2人だとされていた。ローレンス・サマーズ元財務長官、そしてジャネット・イエレン現FRB副議長である。

 そしてオバマ大統領がサマーズ氏に傾いたという報道が出ると、今度はサマーズ氏が身を引いた。上院銀行委員会での承認が難航する可能性が高く、ここでごたごたしては回復しつつある米国経済にも悪影響を与えかねないというのである。第一期オバマ政権で国家経済会議委員長を務めたサマーズ氏に対するオバマ大統領の信任も厚かっただけに、「辞退」を受け入れたオバマ大統領にとっても苦渋の決断だったに違いない。

 しかし、サマーズ氏が身を引いて株価が上昇した。理由は簡単だ。サマーズ氏はバーナンキ議長に比べると「タカ派」だから、もし議長になったら金融超緩和の縮小を急ぐに違いない。その人が「辞退」したから金融の「引き締め」もやや遠のくという論理である。

 先ごろ、ロシアのサンクトペテルブルクで開かれたG20の首脳会議でも、米国は金融政策について新興国から釘を刺された。FRBが金融超緩和を縮小するのではないかという見通しの下に、投資家は資金を新興国から引き揚げていたからだ。このためインドやインドネシアに代表されるように新興国の通貨は安くなり、これらの国は金利を引き上げざるを得なくなっている。

 景気が良くなって金利が上昇する「いい金利上昇」ではなく、通貨安を防ぐために金利を引き上げざるを得ない「悪い金利上昇」だ。これはリーマンショックの傷がまだいえ切らない世界経済にとっては、望ましくない展開だ。

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