一大イベントの陰で何が見えたのか――南相馬市と浪江町の今相場英雄の時事日想(1/4 ページ)

» 2013年08月08日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『震える牛』(小学館)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『鋼の綻び』(徳間書店)、『血の轍』(幻冬舎)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 7月最終の日曜日、私は自家用車を駆り、福島県南相馬市を訪れた。南相馬市や相馬市、そして周辺町村からなる旧相馬藩の一大イベント、相馬野馬追を観戦するためだ。何度もこの地に足を運ぶうち、顔見知りもできた。彼らと旧交を温める一方で、強い違和感を覚えた瞬間があった。政府首脳が「福島の再生なくして日本の再生なし」と声高に訴えているのとは裏腹に、旧警戒区域の復興が全く手つかずの状態だからだ。

真の姿に戻りつつある相馬野馬追

 南相馬市原町区にある雲雀ケ原祭地場。1周約1000メートルの馬場を持ち、トラックの内部は美しい緑色の芝生が生えた美しい場所だ。祭地場の東側には階段状のスタンドがあり、ここを含めて馬場の周囲は約4万5000人以上の観客が埋め尽くした。

 私が訪れた7月28日は、私のような個人だけでなく、大手旅行会社が主催したツアーに参加した老若男女の観客がスタンドや周辺を埋め尽くした。地元の人たちからは観客の数が回復し、ようやく野馬追本来の姿に戻りつつある、との声が聞かれた。

 この日は祭の2日目に当たり、甲冑(かっちゅう)をつけた地元民が馬を駆る「甲冑競馬」、花火とともに打ち上げられた神旗(しんき)を騎馬武者が一斉に奪い合う「神旗争奪戦」が繰り広げられた。500騎近い武者たちが、広大な祭地場を駆け巡る姿は勇壮そのもので、一見の価値があることは言うまでもない。

相馬野馬追・甲冑競馬の一コマ
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