「プリズム」は他人事ではない――あなたもしっかり監視されている相場英雄の時事日想(1/3 ページ)

» 2013年07月11日 08時32分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『震える牛』(小学館)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『鋼の綻び』(徳間書店)、『血の轍』(幻冬舎)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 エドワード・スノーデン(30歳)……。連日、内外のメディアでこの人物の名前が出てくる。多くの読者がご存じの通り、彼は米中央情報局(CIA)の元職員であり、米国家安全保障局(NSA)の個人情報収集活動を暴露したことで一躍時の人となった(関連記事)。スノーデン氏の暴露以降、英国やフランスでも政府機関による通信やメールの傍受履歴が報じられるなど、騒動は拡大の一途をたどっている。米国が日本大使館の通信を傍受していたとも伝えられる中、我々の個人情報はどうなっているのか。

まるで『ボーン』シリーズ

 スノーデン氏関連のニュースに接したとき、私の頭の中である映画のワンシーンが浮かび上がった。

 マット・デイモンが元CIAのエージェントに扮し、国家の陰謀に立ち向かう『ボーン・アルティメイタム』(2007年ユニバーサル、ポール・グリーングラス監督)がそれだ。

 劇中、CIAの支局メンバーが世界中の通信網を傍受しているシーンが映る。この中で、特定のキーワードが傍受網に引っかかり、ストーリーが展開する。このキーワードは、米国政府が絶対に隠したい内容で、主人公がこの騒動に巻き込まれる、というもの。

 劇中では、米国が軍事目的で構築したと言われる通信傍受システム「エシュロン」が登場するが、実際のスノーデン氏によれば、これよりもさらに強力な「PRISM(プリズム)」というシステムが米国で運用され、不特定多数の個人情報がテロ抑止という大義名分の下で集められていたというのが今回の騒動の根源だ。

 私自身としては、「国家による通信傍受は多かれ少なかれあるだろう」という前提でみていたのだが、スノーデン氏が暴露した内容があまりにも具体的、かつ広範にわたるものだったので、先の『ボーン・シリーズ』を遥かに上回る“事実”に驚いた次第だ。

 「プリズム」の存在が明らかになって以降、英国やフランスの大手紙がそれぞれの国の通信傍受の履歴をスクープ。また、米国が日本など同盟国に対しても盗聴などの手段を用いていることも明らかになった。

 多くの読者の関心事は、日本でも同じような通信、メールの傍受がなされているのでは、という点ではないだろうか。

 ミステリー執筆を本業とする身の上故、あちこちのネタ元に聞いてみた。だが、日本にはCIAのような大規模な情報機関がないため、物理的に無理、という答えが大半だった。だが、1つだけ気になる声が寄せられた。

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