中国のバブルが弾ける? 巨大リスクが日本を襲う日相場英雄の時事日想(1/3 ページ)

» 2013年07月04日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『震える牛』(小学館)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『鋼の綻び』(徳間書店)、『血の轍』(幻冬舎)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 一般紙やテレビ報道での扱いは小さいが、ここ数週間、私が注目し続けているトピックがある。それが中国経済、特に金融市場でのお話だ。先週までに、中国の短期金融市場の指標金利が急上昇し、あわやバブルが弾け飛ぶとの懸念も出ていたのだ。対岸の火事と言うなかれ。ここ数年間に起きた国際的な金融危機と比較しても、問題の根っこは深い。

シャドーバンキングの驚異

 昨秋、私は欧州系金融機関に勤める若き中国人バンカーと話す機会を得た。この際、成長著しい中国経済に陰りはないか、具体的にはバブルが弾けるリスクはないかと聞いた。その際、優秀なバンカーは流ちょうな日本語でこう答えた。

 「シャドーの問題が表に出たとき、混乱が起きるかもしれない。そのとき、北京の政府要人たちがうまく事態をコントロールできるか否かに中国の未来がかかっている」

 シャドーとは何か。さらに私が尋ねると、こんな答えが返ってきた。

 「シャドーバンキングのことですよ」

 現在、このシャドーバンキング、すなわち中国経済の「影」の部分が、国際的な金融市場の火種になりかねないとして世界中の投資家の注目を集めているのだ。

 シャドーバンキングとは、中国国内にはびこる非正規金融商品の総称だ。簡単に構図を説明すると、中国の大手や中堅銀行が自身の持つ貸出債権を小口に切り分け、証券の形に束ね直した上で一般の個人に販売している、というのが一般的な形だ。

 この際、市場金利よりも大幅に高い金利を付け、個人投資家の興味を引くというのがミソ。中には普通預金金利の数倍に当たる10%前後の利回りを付けた商品が広く販売された例も少なくない。証券を発行した銀行は、個人に売りさばいて得た資金を、傘下の金融会社を介して中国の土地開発や商業施設の投資に振り向けたという。中国経済の急成長の背景には、「シャドーバンキングが大きな役割を果たしている」(日系証券のエコノミスト)との見方は根強い。

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