鉄道紀行のカリスマが夢見た「富士登山鉄道」とは杉山淳一の時事日想(1/6 ページ)

» 2013年06月28日 08時18分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。


 富士山へ向けて鉄道を敷こうというアイデアは明治時代からあった。観光振興が目的だったから、自然保護の立場とは対立してきた。しかし、最近の富士山鉄道は、モーダルシフトによる環境保護が目的である。特に富士スバルラインによる自然への影響、交通集中による渋滞などのマイナス面が問題となっている。

 そこで、富士五湖観光協会、富士急行、山梨県知事などは「富士スバルラインを鉄道に転換し、自然環境を保護すると同時に、世界文化遺産登録によって増大する入山者に対応しよう」と考えている。富士急行は2007年にスイスの登山鉄道「MGB」(マッターホルン・ゴッタルド鉄道)と姉妹提携しており、ラック式レール(アプト式に代表される歯車レールシステム)の技術に期待している。

 もっとも、富士急行社長の談話などを読むと、富士スバルライン程度の勾配では普通鉄道で十分とのことである。そこで「成田空港から富士山五合目まで直通列車を走らせる」という夢も語っている。富士急行はJR東日本と直通運転する「ホリデー快速河口湖号」を走らせている。新宿―甲府―富士山―河口湖というルートで、この7月からは「ホリデー快速富士山号」に改名する。この列車を新宿―成田空港に延長し、富士山鉄道に直通させようというわけだ。

 つまり、技術的、運用的には可能。あとは資金と環境アセスメントを解決すればいい。ただし、富士山鉄道の構想として語られている部分はここまで。駅の設置計画や車両運用、収支予測などは未定。沖縄県の鉄道計画のような綿密なプラン作りはこれからだ(関連記事)

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