札幌市電「400メートルの延伸」がもたらす大きなメリット杉山淳一の時事日想(1/4 ページ)

» 2013年04月19日 08時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。


 札幌市電は日本で最も北にある路面電車だ。札幌を訪れるほとんどの人が目にするし、札幌を舞台とする映画にも登場する。古くは1981年の高倉健主演『駅 STATION』、最近では5月11日公開予定の『探偵はBARにいる2 ススキの大交差点』に登場し、車内で格闘シーンが撮影されたようだ。また、初音ミクをあしらった『雪ミク電車』もネットで話題になった。

 この札幌市電に大きな変化が訪れようとしている。2013年4月5日、札幌市が申請していた「札幌市軌道運送高度化実施計画」について、国土交通省が認可した。現在の起点/終点である「西4丁目電停」と「すすきの電停」を直結する路線を復活させて、途中に電停「狸小路(仮称)」を新設するプランだ。その延長距離はたった400メートル。道路整備や底床車の導入、それにともなう既設路線の改良などを含めて約59億円のプロジェクト。

札幌市電路線図(出典:Google Maps)青い線が既存路線。赤い線が延伸区間

 このうち、400メートルの延伸に伴う費用は約20億円と報じられた。1メートル当たり500万円とは高いのか安いのか……相場が分からないのでなんとも言えないが、この延伸はとっても意味がある。キーワードは「環状線化」だ。400メートル延伸し、札幌市電を環状線化すると、電車の運行に大きな変化が現れる。運行はスムーズになり、運行間隔は短縮され、増発も容易になる。

札幌市が導入した新型車両(出典:国土交通省発表資料)
札幌市の市電延伸区間(出典:国土交通省発表資料)。線路は歩道寄りとし、電車に乗りやすくする
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