模造薬、ヤミ金、儲け話……いかがわしいモノに手を出す“客”の心理とは?窪田順生の時事日想(1/4 ページ)

» 2013年04月16日 08時00分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

窪田順生氏のプロフィール:

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。


 先日、元暴力団員のAさんと久しぶりにメシを食った。

 10年前に取材をした時は、まだ某広域暴力団の構成員だったので、ダブルのスーツでビシッときめ、首元には金のネックレスがジャラジャラしていたが、カタギになったとかでジーンズにスニーカーとすっかりカジュアルな出で立ちになっていた。そんなAさんに、「最近はどんな仕事をしているんですか?」と尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「クスリだよ」

 なんとなく予想していたが、シャブはさすがにマズいだろう……という私の表情を読み取ったのか慌ててAさんが続ける。

 「違う違う、バイアグラとシアリスをネットで売ってんの」

 この手の人たちが正規品を扱うわけがない。さらに突っ込んで聞いてみると、「コピー品だけど、中味にはなんの問題もない」という。まあ要するに、「模造医薬品」の販売をしているのだ。ED治療薬を製造・販売している4社が鑑定調査を実施したところ、ネットで流通しているED薬の55.4%が偽造品だったという。

 バイアグラでもシアリスでも病院に行けば誰でも処方されるのだから、いかがわしい「模造医薬品」を買う人間なんてそんなにいないだろう、と思うかもしれないが、これが結構多い。

 今年2月、大阪の暴力団組長が中国から輸入した「模造バイアグラ」を売ったとして逮捕されているが、顧客が1700人もいて、代金振込口座には約2800万円の売り上げがあった。ちなみに、その翌月にも、中国人の兄弟がネットで「模造バイアグラ」を売ったとして逮捕されているが、やはり2億8000万円もの荒稼ぎをしている。

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