その買い推奨はホンモノ? 強気市況の陰に“お寒い事情”相場英雄の時事日想(1/3 ページ)

» 2013年04月11日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『震える牛』(小学館)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『鋼の綻び』(徳間書店)、『血の轍』(幻冬舎)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 先週、新生・黒田日銀が繰り出した“異次元”の追加金融緩和措置により、東京株式市場が沸いた。株式市場の重要指標の1つである日経平均株価は次々と節目を破って上昇、主要メディアにはアベノミクスを賞讃する見出しが躍った。

 日銀を巡る詳報は他稿に譲るとして、今回は沸きにわく株式市場の中身に焦点を当ててみる。株価は先々の企業や、ひいては日本経済全体の姿を写す鏡とされるが、その格言はホンモノなのだろうか。個別企業を取り上げ、分析してみた。

買い推奨リポート続出

 「ここ最近、あまりにも無責任な買い推奨リポートばかり送りつけられてくる」

 過日、外資系運用会社のファンドマネージャーと会った際、開口一番こんな愚痴を聞かされた。

 日本株は安倍政権の船出とともに約4割も上昇、さぞやファンドマネージャーの機嫌が良かろうと予想していた私は肩すかしを食った恰好に。早速、“無責任な買い推奨”について聞いてみた。

 「これ、どう思う?」

 ファンドマネージャーはノートPCを開き、内外の複数の証券会社アナリストから送付されたメールを開けてくれた。画面に目を凝らすと、東証1部上場のソニーに関するリポートだった。

 内外の大手証券アナリストが注目していたのが、ソニーが今年中に発売するゲーム機PS4を軸にした新戦略だった。

 詳細は各種の専門媒体に譲るが、ゲーム機をハブに、同社製スマートフォンやテレビ、PC・タブレット端末でゲームや動画、ネット機能などを共有できるというものだった。

 主要紙でざっとこのニュースに接していた私は、首を傾げた。さまざまな商品をつなぐというアイディアはソニーらしいと感じたが、私自身は、既に米アップルで同じようなサービスを数年前から使っていたので、ほとんど目新しさを感じなかったからだ。

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