アベノミクスでITは変わるのか?中村伊知哉のもういっぺんイってみな!(1/2 ページ)

» 2013年04月02日 08時00分 公開
[中村伊知哉,@IT]

中村伊知哉(なかむら・いちや)氏のプロフィール:

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授。京都大学経済学部卒業。慶應義塾大学博士(政策・メディア)。デジタル教科書教材協議会副会長、 デジタルサイネージコンソーシアム理事長、NPO法人CANVAS副理事長、融合研究所代表理事などを兼務。内閣官房知的財産戦略本部、総務省、文部科学省、経済産業省などの委員を務める。1984年、ロックバンド「少年ナイフ」のディレクターを経て郵政省入省。通信・放送融合政策、インターネット政策などを担当。1988年MITメディアラボ客員教授。2002年スタンフォード日本センター研究所長を経て現職。

著書に『デジタル教科書革命』(ソフトバンククリエイティブ、共著)、『デジタルサイネージ戦略』(アスキー・メディアワークス、共著)、『デジタルサイネージ革命』(朝日新聞出版、共著)など。

中村伊知哉氏のWebサイト:http://www.ichiya.org/jpn/、Twitterアカウント:@ichiyanakamura


※編集部注:本記事は2013年3月29日に@IT「中村伊知哉のもういっぺんイってみな!」で掲載された記事を転載したものです。

 アベノミクスというやつ。金融緩和と財政拡大と成長戦略の3本柱だそうで。

 ITやデジタルに関わりが強そうなのは3つ目の成長戦略。行方が気掛かりだ。ただ、産業振興よりも規制改革、つまり補助金を積むよりも規制緩和で、というのが安倍政権の基本路線のようなので、一安心ではある。デジタルは、弱い分野にお金をつぎ込むよりも、利用分野の規制を緩めてもらい、使われたがっているのだ。民主党政権の発足時は、情報通信法に後ろ向きで、規制緩和にも通信放送融合にも電波開放にもソフトパワー発揮にもネガティブだったので、当初つまずきを見せたが、自民党政権ではそんなことはなさそうだ。

 しかし、安倍政権はまだIT政策も知財政策もはっきりしたプランができていない。前の総選挙でも、経済、TPP、原発……多岐にわたる論点があったが、メディア政策についてはほとんど議論にならなかった。公約にあることはあった。自民党は、災害に強い情報インフラの整備、サイバーセキュリティ対策の強化、クールジャパンの国際展開などを掲げていたし、民主党はスマートメーターの普及促進、マイナンバーの利用開始、電波オークションの実現などを説いていた。公明もスマートメーターの普及や医療情報化の推進、アニメなどの海外展開支援を挙げていた。だが、いずれも政策の優先順位は高くない。

 前回、民主党政権に移行する際、高く掲げられたマニフェストには唯一「ネット選挙解禁」がうたわれていた。それさえまったく前進せずにおしまい。だから、これからも期待してはいけないのかもしれない。それでもなお、政治にしか期待できないことはある。

 例えば、「文化省を作ろう」。

 私はこのコラム(「文化省を作ろう」)でも申し上げてきた。念仏のように繰り返している。

 これに対し、「ハコはええから中身を考えろ」というご批判もいただいている。そりゃその通り。初代大臣と目するオノ・ヨーコさんが政策を考えれば良いのだが、それだけだと無責任なので、もしもブレーンに登用されたら進言するプランを挙げてみる。

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