「お世話になっております」は言わなきゃいけない?日本人が気づいていないヘンな日本語(1/2 ページ)

» 2013年04月02日 08時00分 公開
[デイビッド・セイン, 長尾昭子,Business Media 誠]

日本人が気づいていないヘンな日本語:

book

 この連載は書籍『日本人が気づいていないちょっとヘンな日本語』(アスコム)から抜粋、再編集したものです。

 日常会話でよく使う日本語なのに、実は日本人自身もよく分かっていない。よく使うけど、考えてみたらちょっと不思議な日本語……。そんなこと、ありませんか?

 「ピンからキリまで」の「ピン」って何のこと? とか、「全然OK」は間違った使い方と言われるけど、実は間違いではないって知っていましたか?

 私たち日本人が「当たり前」と思っていることも、外国の人たちから見ると「ヘンだよ、おかしいよ」ということがたくさんあります。間違った日本語ということではなく、外国人の目から見て奇妙に見えるということです。

 この本では、英語教師デイビッド・セイン氏が持つ日本語の疑問について、日本語教師である長尾昭子氏が答えていきます。みなさんも、質問に登場する「日本語」の中に「日本語のおもしろさ」を再発見できるはずです。「ヘンだけどおもしろい日本語」の世界を、一緒に探検してみませんか。


著者プロフィール:

デイビッド・セイン

アメリカ出身。英会話学校経営、翻訳、英語書籍・教材製作などを行うクリエイター集団「エートゥーゼット」の代表。これまで累計350万部の著作を刊行してきた英語本のベストセラー著者。日本で30年以上の豊富な英語教授経験を持ち、これまで教えてきた日本人生徒数は数万人に及ぶ。


長尾昭子(ながお・あきこ)

 公益社団法人国際日本語普及協会(AJALT:文化庁所管の外国人への日本語普及・教育機関)講師。慶応大学卒。欧米人のビジネスパーソンや外交官の間で大人気の教師で、教科書作成や日本語教師向けの雑誌への連載執筆の実績多数あり。


「お世話になっております」って言わなきゃダメ?

セイン:日本の手紙やメールで不思議に思うのは、特に親密な関係でもない相手なのに「いつもお世話になっております」という文章が最初についていること。そのたびに、「別にお世話した覚えはないんだけど……」と思ってしまいます。

長尾:商人のあいさつが定型化したのでしょうが、日本人でも不思議がっている人はたくさんいますよ。その証拠に「いつもお世話になっております」で検索すると、興味深い意見がたくさん出てきます。

 代表的な意見は「判で押したように相手構わず定型文のように使っていると、真心がこもっていないと思われる」というものでしょう。心がこもってこそのあいさつですから、形だけになっては逆効果。1度も会ったことのない相手に「いつもお世話になっております」は、失礼でしょう。

セイン:友だち全員に同じクリスマスカードを送るのではなく、相手によって変えたほうがいいのと同じですね。

長尾:そうです。そして相手との関係によっては、ややくだけた表現にして親しみを出すこともできます。やりとりが重なった場合などは、毎回同じように「いつもお世話になっております」ばかりだと、「こいつ、テンプレートを使ってるな」と見透かされてしまうので、「何度も失礼します」とか「たびたびご連絡して申し訳ありません」などとすべきです。

ワンパターンを避ける工夫を

セイン:でも、メールを出す相手がたくさんいる場合は、いちいちあいさつ文を考えていたら時間がいくらあっても足りませんね。そういうときは、どうすればいいのですか?

長尾:何種類かあいさつ文を用意しておいてそれを定型文に登録しておき、一部を変えながら使うのがいいと思います。そうすれば、手を抜いているとは思われないでしょう。

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