雪は降らなかったけど、JR東日本が間引き運転を決めた理由杉山淳一の時事日想(1/6 ページ)

» 2013年02月15日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。


 東京の鉄道は雪に対してもろい。2013年2月6日、東京圏のJR東日本の列車は雪の影響を見越して大幅に減便し、その影響で都内各駅は大混乱となった。まるで災害帰宅時のような大混雑。ホームは人で埋め尽くされ、危険防止のため改札口では入場制限となり、駅の外にも長い列ができた。しかし、線路に雪が被るほどの積雪はなかった。雨の日とほぼ同じ。スカスカの線路に減便された電車。そして大混雑が発生して列車は遅延。

 そもそも、この日、減便する必要はなかったのではないか。

 結果論で言いたい放題、という見方をされそうだが、私はこの事態に「鉄道の運行管理システムの弱点が露呈した」と思えた。

間引き運転の実態と判断ミス

 その日、JR東日本の処置は、まずは優等列車の運休だった。上り通勤ライナー、新宿・東京・上野発着の特急列車の一部、成田エクスプレスが運休となった。遅延が見込まれるなら速達サービスは不可能だから、これは妥当だ。

 次に、湘南新宿ライン全列車を運休させた。湘南新宿ラインは運行経路が多岐にわたるため、ダイヤの乱れが広範囲に及ぶ。新横須賀線との分岐点(蛇窪信号場:大崎―西大井間)は平面交差のため、横須賀線や総武線快速、その先の成田線や外房線、内房線にも及ぶ。これも正しい判断である。

 さらに通勤各線の減便を実施した。始発から10時ごろまで、青梅線の立川−青梅間は半数を減らした。青梅線の青梅以遠は1割カット。五日市線、八高線、伊東線も1割の削減。1割は軽微に見えるが、もともと本数が少ないから、これでもかなり運行間隔は開く。

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