ステマ騒動なんのその、一般ニュースも“プロ”が操る時代相場英雄の時事日想(1/3 ページ)

» 2013年01月24日 08時05分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『震える牛』(小学館)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『鋼の綻び』(徳間書店)、『血の轍』(幻冬舎)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 年明けのテレビ、新聞報道をチェックするうち、猪瀬直樹東京都知事の露出度が高いことに気付いた向きは多いはず。2020年の五輪・パラリンピックの東京招致に向け、知事が積極的に内外を駆け回った一連のニュースだ。政局絡みの素材が少なく、事件・事故などの発生モノが少なかったことを割り引いても、彼の露出度は高かった。その背後には、きちんと理由があるのだ。その理由とは、ニュースを制御する“プロ”たちの存在だ。

猪瀬知事の露出度

 昨年末に投開票が行われた東京都知事選挙。選挙運動中、猪瀬氏の態度にカチンときた向きが多いのでは。彼は、取材する記者を度々見下すような物言いをするときがある。もちろん、彼自身に悪気はなく、固有のキャラクターに他ならない。

 ただ、年明けから本格化した五輪の東京招致キャンペーンの際はこの態度が一変した。先のロンドン五輪で活躍したメダリストたちとイベントに出席した際、あるいは招致活動の一環としてロンドンを訪問した際などは、にこやかとまではいかなくとも、記者からの質問に丁寧に対応していたのが印象的だった。

 あわせて、猪瀬知事の活動状況がかなりの頻度でメディアに取り上げられた。そこには明確な理由がある。マスコミ対応に長けたプロのコンサルティング会社がアドバイザーとしてバックアップしているからだ。

 東京五輪招致のケースでは、大手外資系のウェーバー・シャンドウィック社がその任を果たしている(参照リンク)。個別の記者対応のスキルのほか、五輪招致のライバルたちの分析をも同社は請負っているはず。だから、普段仏頂面の猪瀬知事が、多少顔をひきつらせながらも記者に笑顔を振りまいていた、と私は読む。

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