路面電車はシャッター街を救えるのか杉山淳一の時事日想(1/5 ページ)

» 2012年12月14日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。


 日本の路面電車は高度成長期以降、「自動車交通の邪魔者」として淘汰された歴史がある。しかし現在、超低床車両の開発、近年のエコ社会やユニバーサルデザインの推進によって見直されている。欧州の事例、それを手本とした富山ライトレールの成功、広島電鉄や岡山電気軌道の低床型車両の導入によって、LRT(次世代路面電車)が高く評価されている。

 11月18日に行われた宇都宮市長選挙は、同市内の次世代路面電車導入が争点のひとつであり、推進派の現職、佐藤栄一氏が当選した。路面電車導入を検討する自治体は多いが、宇都宮市のように新規に路線を建設しようとする事例は少ない。その意味でも宇都宮市の動向に注目だ。

 もう1つ注目すべき都市がある。福井県福井市だ。福井市には「えちぜん鉄道」と「福井鉄道」という2つの地方鉄道が乗り入れ、どちらもJR西日本の福井駅前を発着している。このうち「福井鉄道」は福井市内の一部を道路併用軌道で運行している。ところが、福井鉄道の福井駅前駅はJR福井駅西口から約150メートルの距離があり、乗り換えにはやや不便だ。

 しかも、JR福井駅は高架駅にリニューアルされ、ますます福井駅前電停から遠くなった印象がある。ホームの位置は西側に移動したため、ちょっとだけ福井駅前電停に近づいている。しかし、線路の外側にあった駅舎が高架線路の直下に引っ込み、旧駅舎の跡地は駅前広場の一部になる。実際の乗り換えで歩く距離は変わらないにしても、心理的には遠く感じる。

現在の福井駅前電停(2009年撮影、左)、福井駅前電停からJR福井駅方面を望む(2009年撮影、右)

福井駅前(出典:Google Maps)
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