北朝鮮のミサイル脅威にどう対処するべきか藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2012年12月03日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 北朝鮮がまたミサイルを打ち上げるのだという。ルートは南方というから今年打ち上げに失敗したのと同じ方向だ。南への打ち上げに成功すれば、北へも打ち上げられることを実証することになる。つまり米国に届くというのがメッセージなのだという。

 日本はもうとっくに北朝鮮のミサイルの射程に入っている。この現実をわれわれ日本人はいったいどう見ているのだろうか。初めて日本の上空を飛び越えたときには、日本全体が北朝鮮への反発や怒りにわき上がった。それはそうだ。核兵器の保有に意欲を燃やす国が日本全土を射程に収めるミサイルを保有すれば、核攻撃の脅威のレベルが上がる(ミサイルに搭載できるぐらい核弾頭を小型化するのも完成したか、完成間近とされている)。

 日本の防衛は(国防軍と呼ぼうが何をしようが)、「専守防衛」ということを前提に成り立っている。予算の額の問題ではなく、装備の問題だ。したがって「敵地攻撃能力」というものは原則的に保有していない。例えば、敵地までの長距離を飛んで爆撃して帰投できるような戦略爆撃機とか、敵地のそばまで移動できる航空母艦とか、長距離弾道弾ミサイルあるいは巡航ミサイルといった装備はない。

 従来型の戦争だけを考えていればよかった時代なら、それでもよかっただろうが、ミサイルが飛んでくるとなると話は変わってくる。もっとも中国のミサイルが日本に照準を合わせているという現実からすれば、北朝鮮の数発のミサイルが日本を狙ったとしてもさして違いはないとも言えなくもない。しかし中国と比べて北朝鮮は不安定な国という条件の違いは大きいだろう(だから中国の政治情勢が変化するときには神経をとがらせなければならないのだと思う)。

 ミサイル防衛と言っても、実際のところはまだそれほど確実なものではない。だいたい北朝鮮から日本までは10分かからないとすれば、発射してからそれを探知し、迎撃する余裕があるかどうかさえ定かではない。

 そうなると明らかに北朝鮮が日本を攻撃する目的で、ミサイルを準備していることが判明した時点で、その基地を先制攻撃するしか方法がないということになる。しかし日本にその手段はない。航空自衛隊のF2戦闘機にジェイダム弾(精密誘導爆弾)を搭載して攻撃するということも考えられるが、ミサイル基地が内陸部にある場合は、敵の防空網を破壊することを先に考えなければならない。米軍は敵レーダー基地から電波が発射されればそれを逆に追尾して爆撃する能力を持っているが、日本の自衛隊には残念ながらそれもない。

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