ネガティブキャンペーンばかりの衆院総選挙でいいのか?藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2012年11月26日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 民主党の党内ガバナンスができていないことははっきりしていた。法案を成立させられない政権は失格なのである。もちろん衆参ねじれという状況はあったにせよ、ねじれていなかった2010年の通常国会(鳩山首相のときだ)でも法案成立率は異様に低かった。

 その意味では解散は当然だと思う。しかし解散してみると、次の政権を担う可能性が高い自民党は、昔の国民をがっかりさせた自民党とどこが違うのかが分からない。安倍総裁は、10年間で200兆円もの公共投資を行い、その原資は建設国債を日銀に引き受けさせると言った。輪転機を回してお札をどんどん刷ればいいとも言った。日銀法を改正しても、日銀にインフレターゲットを受け入れさせ、無制限に金融を緩和させるという主旨のことも言った。

 実際、バブルが崩壊した1990年以降、自民党はある意味で果てしない公共事業をして経済にてこ入れしてきた。それでも日本経済は浮上せず、1997年には金融危機を迎えた。この間に積み上がった国債や国の借金は、年度末には1000兆円を超えようとしている。財政再建はそっちのけで、ここに新たに200兆円の建設国債を積み増すのだという。

 民主党政権の3年間でもデフレから脱却できなかったから、自民党政権に戻ったらまた昔ながらの「土建国家」に逆戻りしようと言っているようにしか見えない。東海、東南海、南海の地震があればそれこそ日本に壊滅的な被害が出るという推計も出た。だからといって、経済波及効果が小さい土木工事に巨額の費用をつぎ込む余裕はない。そこに超金融緩和を組み合わせれば、まかり間違えば超インフレになる可能性だってあるだろう。

 安倍総裁は「インフレを招く」と批判されて「デフレのままでいいのか」と乱暴な反論をした。一国を率いようというリーダーがこんな議論をしていいはずがあるまい。日本という国の経済をどのように「再生」するのかはもう少し真摯な議論が必要なはずだからである。

 もっとも、乱暴なのは自民党だけではない。

 このままでは日本がだめになるから、何が何でも中央官僚支配をぶっ壊すという一点でまとまろうとしている第三極も、乱暴な話である。それだけではない。反原発、反TPPなど、「反」だけで徒党を組むというのも前代未聞だ。そもそも「反」であれば、それでは自分たちはどうするのか、という提案がなければ政策にならないだろう。

 TPPに参加すれば日本の農業がだめになる、農地が荒れるということは国土が荒廃するということだ。反TPP派はそう主張する。しかし国が最も手厚く保護してきたはずのコメですら、消費も減る一方で、やがて担い手がいなくなる運命にある。耕作放棄地が増えているのは、これまでの誤った農政の結果ではないのか。関税で保護しなくても、補助金で保護するという手段はある。実際、多くの先進国でそうしている。将来展望を欠いたまま、反対を唱えるのは、政治家としては失格だ。

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