“赤信号”を計画に織り込んでいるか(1/2 ページ)

» 2012年11月21日 08時00分 公開
[純丘曜彰,Business Media 誠]
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著者プロフィール:純丘曜彰(すみおか・てるあき)

大阪芸術大学芸術学部芸術計画学科哲学教授。玉川大学文学部講師、東海大学総合経営学部准教授、ドイツ・グーテンベルク(マインツ)大学メディア学部客員教授を経て、現職に至る。専門は、芸術論、感性論、コンテンツビジネス論。みずからも小説、作曲、デザインなどの創作を手がける。


 関西に来て最初に聞いた冗談。青は進め、黄色は気をつけて進め、赤は覚悟して進め。だが、まったく冗談にならない。赤信号になろうものなら、赤信号に「なんでや!」と文句を吐きながら、そのまま直進してくる。明らかに右折矢印が出ているのに、何度、強行突破の直進車で恐い思いをしたことか。

 計画学などというものをやっていると、一般の人とは話が合わない。みんな、計画と言うと、スケジュール表のようなものを考えている。プロジェクトでも、旅行でも、そこでは1つの手違いもなく順調に進むことになっている。そして、それしか考えていない。だが、どんな物事でも最短でうまく行くことは、まずありえない。それは言わば、すべての信号機がオール・グリーンライトになって、目的地までノンストップで直行できるような状況だ。

 5つのサイコロを振って、全部、1の目が出ることを期待するのが、相当バカげていることくらい、誰にでも分かるだろう。なのに、計画というと、それをやる。そればかりか、「1の目が出なかった」と言って、当たり散らす。さらには、勝手にごまかして、1の目が出たことにしてしまおうとする。

 まあ、気持ちは分からないでもない。すべて青信号の状況しか計画として考えていない連中は、たった1つでも途中で赤信号になると、それがそのまま計画全体の遅れということになってしまう。だから、それを無視して、突っ走ろうとする。困ったことに、これが時にはうまく行ってしまう。だから、「そうするのが一番だ」と思い込む。だが、そのうちいつか、命に関わるような大事故を起こす。

 しかし、どこでも1回も赤信号は出ない、という前提で計画していたことの方が間違いだったのだ。自分が間違っていたくせに当たり散らされても、赤信号もいい迷惑だろう。そもそも、赤信号は、誰のためにあるのか。赤信号が出ているのは、それなりの理由があるからだ。それが出ている時は、横からくる車にぶつかる危険性が破格に高くなる。

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