注文はFAXと人海戦術だなんて……超アナログな出版業界の衝撃Google副社長の発言が(後編)(1/4 ページ)

» 2012年11月09日 08時00分 公開
[村上福之(クレイジーワークス),エンジニアtype]
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著者プロフィール:

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村上 福之(むらかみ・ふくゆき)

 株式会社クレイジーワークス 代表取締役 総裁

家電メーカー系エンジニアでプリンタやSDカード関連の開発に従事。ケータイのアプリやサイト、電子書籍のシステムなどに詳しい。空気を読まない発言で、ネットの住民の注目を集めている。人づきあいが苦手。最近、断食にはまる。

誠ブログ:村上福之の誠にデジタルな話

オルタナティブブログ:村上福之の「ネットとケータイと俺様」


すでにないベストセラーのノウハウ

book 『ソーシャルもうええねん』(Nanaブックス)

 Nanaブックスさんは、2008年に日本で3番目に売れたビジネス書『情報は1冊のノートにまとめなさい』を出版した経験がありました。

 しかしそのノウハウは、今ではほとんど残っていませんでした。その当時のメンバーが辞めてしまっていたからです。さすが出版業界。ネット業界以上に人材の流動が激しいみたいです。つまり、今いるメンバーはベストセラー部隊が全員辞めた後のメンバーなのです。

 それ以降、Nanaブックスさんはベストセラーを出したことはないようでした。


ドラクエ2のパーティーより少ない営業、同人誌のような販売数

 僕は初めて知ったのですが、本の営業とは、1店舗ずつリアルにお店を回って行うのが基本のようです。ある程度は取次から配本されますが、多くは書店営業です。びっくりしました。

 今、21世紀ですよ!

 中学生でも地球の裏の情報を、手のひらのスマホで入手できる時代ですよ! そんな時代にリアルに足で営業して、FAXで注文書を送ったりするんですよ! ネット業界ではすでに撲滅した、太古の秘密兵器「FAX」が大活躍ですよ! 「なぎはらえ!」で大量送信ですよ!

 えぇ、本当に「コンニチハ20世紀。マタ会イマシタネ」という気分でした。何なんですか、この業界。

 新刊は基本的に人海戦術で回るのがデフォルトのようです。気が遠くなりました。家入さんの本が先日、ディスカヴァー・トゥエンティワンさんから出ましたが、こうした大ヒットビジネス本を売る会社は、聞いた限りですが、営業部隊が全国に常駐しているそうです。『もしドラ』で有名な『もしも高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』を売ったダイヤモンド社さんも何十人も営業がいますし、『人生がときめく片づけの魔法』を作ったサンマーク出版さんも人海戦術です。

 そして、トップの大号令で各地の営業部隊が「えいやぁ!」と、日本中の書店に本を置いていくようです。足りない部分は営業代行で頼むようです。そうして沖縄から北海道まで、本を日本中の書店にバラ撒くのです。

 さて、今回の版元のNanaブックス。営業のパーティは、編集兼営業の荒尾さんと部長。以上。当初の戦闘員は荒尾さんだけ。部長は別の本にかかりきりでした。ドラクエ2でもパーティーは3人います。

 最初は、実質の営業は荒尾さんだけでしたが、後半は部長も動きました。

 それで荒尾さんに今年出した本の販売実績を聞くと、出版不況全盛期ですよという数字が出てきて血の気が引きました。他社のPOS(販売時点情報管理)から調べると、明らかに、物によっては入荷しても棚に置かずに返本しているような本もありました。

 「何なんだこれは。コミケの同人誌の方がまだ売れるぞ……」

 僕が5年かけて書いたブログをこの出版社で出すのか。Nanaブックスさんそのものは別の事業で収益を上げており、経営的には問題はないようでした。しかし、出版事業は実績を出すのは難しい状況でした。

 5年かけて書いたブログなので、同人誌のコピー本よりは売れてほしいです。

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