それでもオスプレイは配備される――そう感じるワケ相場英雄の時事日想(1/3 ページ)

» 2012年09月27日 08時01分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『偽装通貨』(東京書籍)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『震える牛』(小学館)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 山口県の米軍岩国基地に一時駐機されている垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ。先週、日本政府が国内での飛行を可能にする安全宣言を出したことから、米海兵隊が同基地周辺での飛行訓練に踏み切った。同機が沖縄県の普天間基地に配備されることについて、日本国内で根強い反対論とは裏腹に、私はオスプレイが配備され、米軍が本格運用に踏み切る時期は極めて近いとみる。その理由を日米政府の力関係の一端から紹介する。

「いつから独立国家になった?」

 私は防衛関連分野の取材をしたことがない。よって、オスプレイの安全性の詳細を知っているわけでもなく、また導入について、正否の白黒をつける判断材料も持ち合わせていないことを予めご了解いただきたい。

 ただ、かつて通信社の経済部に在籍し、日米の金融関連の会議や討論などを長年取材した経験があるため、今回のようなデリケートな案件でどのような交渉が日米間で行われてきたか、大方の想像がつくのだ。こうした観点から、オスプレイの導入の裏側を想像してみる、というのが今回の狙いだ。

 オスプレイの事故が相次いだことで、米国は丁寧かつ慎重に日本の世論に配慮しているが、結論から言えば同機の配備方針が覆されることはない、と私はみる。

 今から15年ほど前のこと。私は経済部の外為担当記者を務めていた。当時、外為市況がたびたび荒れることがあり、日米の金融当局が緊密に連絡を取り合っていた。

 ある日、私が日銀幹部を取材したときのこと。深夜の住宅街でこの幹部の帰宅を待ち受けていると、こんな場面に遭遇した。

 日頃冷静な幹部だったが、この晩はしたたかに酒に酔ってハイヤーから降車したのだ。幸い、他社の記者がいなかったので“ぶら下がり”、酔いの根源を質した。すると、こんな言葉が返ってきた。

 「この前の介入だけど、事後報告だったんだよ。そうしたら、怒られたのなんの。『おまえら、いつから独立国家になったんだ?』って言われてさ」――。

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