あの歓声が忘れられない、相馬野馬追を見てきた相場英雄の時事日想(震災ルポ南相馬編)(1/4 ページ)

» 2012年08月23日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『偽装通貨』(東京書籍)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『震える牛』(小学館)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 先月末、私は2日間に渡り国の重要無形民俗文化財「相馬野馬追」を見た。東日本大震災による大津波の被害を受けた上、福島第一原発事故に伴う災禍で生活の一部を奪われた市民たち。さまざまな声に接しながら、私は勇壮な野馬追を体感した。主要メディアでは拾い切れなかった声や現実を綴る。

 →馬と人間が一番近い街、相馬野馬追を見てきた

執行委員長の言葉

 私は7月28日に行われた野馬追の出陣式に次いで、翌29日に開かれたメーンイベントである「お行列」、そして「甲冑競馬」を観戦した。

 お行列とは、旧相馬中村藩に属していた5つの郷の武者たちが市内を練り歩く行進のこと。市内と近隣町村の各地を出陣した武者たちは、南相馬市原町区の雲雀ケ原祭場地に向かう。この間、広大な競馬場状の「祭場地」へ通じる市内の道路は封鎖され、鎧兜、甲冑に身を包んだ一団が通り過ぎる。

 初めて見る「お行列」は壮観のひと言に尽きた。

 私は沿道から祭場地に設けられたスタンドに移動し、武者たちの行進を見続けた。

祭地場に入場する「お行列」(左)、祭地場に到着した武者たち(右)

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