先ほどの表からちょっと離れて、「政治影響力」を要素分解してみると、次のような感じでしょうか。
(人口×投票率)×(ニーズの画一性×結束力)=「政治影響力」
前半は先ほど書いた話です。後半の「ニーズの画一性」は、世代のニーズが画一的だと、票がまとめやすいだろうと思って加えました。
全員が経済的な豊かさを目指していた高度成長期だと、大半が(共産党や社会党ではなく)資本主義を守ると公約する自民党を支持します。けれど豊かになると「格差に反対」の人と「格差があるのは当然」という人に分かれてきます。
一般的に、経済的に豊かになると個々人のニーズが細分化され、政治影響力が分散します。今まで若者が政治影響力を持ちにくかったのは、この理由(大きな流れとして、昔よりみんな豊かになり、ニーズが多様化したこと)も大きかったと思います。
ただ、最近の若者は経済的に恵まれていないので、再度「ニーズが画一化」し始めています。反対にシニア層はここに来て格差が一気に拡大しているので、若者は相対的に有利になりつつあるのかもしれません。
「結束力」は、いわゆる「組織票」へのつながりやすさを表しています。これまでの中高年は、都市部では企業や労組、地方では農協や共同体を通じて、盤石の結束力を誇ってきました。一方の若者、特に都会の若者はまったく連帯しないので、この点ですごく弱かったと思います。
ところが、これも傾向が変わってきました。特に若者がネット上で結束するきっかけが得られるようになったのは大きな変化でしょう。
この式に基づいて、若い世代の政治影響力を向上させようとすれば、これら4要素のいずれかを上昇させれば良いということになるのですが……人口は簡単には増えません。ニーズは、「社会に虐げられている若者」(世代間格差問題)というコンセプトで少しはまとまりはじめています。
あとは投票率と結束力を上げることが必要です。本当はこの2つは、若者が得意なITやWebの活用が効果的な分野です。
携帯電話から指紋で個人認証して選挙に投票できるようになったら、若者の投票率は大きく変わるはず。いろんな政治課題に関して“イエス or ノー”で答えていったら、「あなたが投票すべきはこの候補者です!」と表示される選挙ゲームも面白そう。
ほかにも、小選挙区ごとにリアルな年代別の有権者数が入力されたプログラムを作り、「○○地域では、20代の有権者のうちあと○%、すなわち○人がこの人に投票したら結果が変えられます!」みたいなシミュレーションソフトもいいですよね。そういうのがあれば、「おっ、だったら選挙行ってみるか」みたいになるかもしれません。
ちきりんが思うに、若い人が政治に求めるべきことは雇用対策やら福祉、景気対策ではなく、ただただ「電子投票制度の導入」と「ネットによる選挙活動の解禁」にその主張を集中させて実現させることだと思います。ここさえ突破すれば若い人の政治力は2倍にできるかもしれないのです。
今でも20代の人の10%が選挙に行けばそれだけで150万票……場所にもよりますが10〜20人を当選させられる票数です。
しかし、急いだ方がいい。次の何年かが最後のチャンスです。もう1回、最初の表を見てください。少子化で若年層の人口は急激に減りつつあります。若者が「投票率を上げれば勝てる期間」(=持ち時間)は限られているのです。
そんじゃーね。
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