馬と人間が一番近い街、相馬野馬追を見てきた相場英雄の時事日想(震災ルポ南相馬編)(1/5 ページ)

» 2012年08月09日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『偽装通貨』(東京書籍)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『震える牛』(小学館)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 先の7月28日。私は5月に続き、再び福島県南相馬市を訪れた(関連記事)。目的はこの街の伝統行事であり、国の重要無形民俗文化財「相馬野馬追」(そうまのまおい)を見るためだ。

 昨年、東日本大震災が発生し、その後に起きた福島第一原発事故の影響で街の人たちは野馬追の開催規模を縮小せざるを得なかった。今年は除染の徹底とともにほぼ従来通りの規模で伝統行事が復活した。1人の旅行者として、またモノカキの視点で野馬追に接した一番の印象は、「馬と人間」がこれほど近い距離にある街はない、という点だった。また、依然として進まない復興の状況に愕然(がくぜん)とした。

出陣式の背後で

 今年の相馬野馬追開幕について、共同通信が7月28日に配信した記事で伝統行事の概要を伝えたので、一部転載する。

 福島の伝統行事「相馬野馬追」が開幕 規模も復活

 戦国絵巻さながらに、よろい姿の騎馬武者が疾走する福島県の伝統行事「相馬野馬追」が28日、始まった。昨年は東日本大震災と東京電力福島第1原発事故のため規模を縮小したが、避難区域の再編や除染の結果、ほぼ通常に戻り、30日まで行われる。

 〜中略〜

 参加者は昨年82騎にとどまったが、今年は約400騎で例年の8割程度に回復した。

 甲冑姿で駆ける「甲冑競馬」や、旗を奪い合う「神旗争奪戦」も復活し29日に実施。30日は馬を素手でとらえ奉納する神事「野馬懸」が、本来の場所の相馬小高神社で行われる。〔共同〕

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