ユーロ圏の統合深化、次のステップは中央銀行の統合?藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2012年07月30日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 ユーロ圏の危機は一向に出口が見えず、いったん落ち着いたかに見えてもすぐに火の手が別のところからあがる。それを見て消化に駆けつけ、何とか食い止めたと思ったら、完全には消火できず、また消防隊は現場に逆戻り、といった感じだ。

 ギリシャがその典型である。いったんはEUなどから支援を受けるかわりに緊縮財政政策に転換する約束をした。これでほかの欧州諸国は一様にホッとしたものだが、ところがその政権党が5月の総選挙で敗れてしまう。連立政権をどの政党も組むことができず、とうとう再選挙になったのが6月17日。ようやく支援受け入れ、緊縮推進を主張するもともとの政権党が過半数を制したものの、国民の声に押されて歳出削減目標の繰り延べなどをEUに要請する始末だ。この要請に応じるのかどうか9月には決着させなければならない。

 また9月12日にはドイツの憲法裁判所で、先に決まったESM(欧州安定基金)への出資は違憲とする提訴の判決が下される。恐らく合憲という判断が出るものと期待されているが、その場合でも、ドイツの出資に何らかの制約が課される可能性は残る。また9月12日にはオランダの総選挙も行われる。オランダの連立政権は、財政緊縮策をめぐって連立与党内で対立が起こり、政権が崩壊した。それを受けての総選挙だが、他国に対する支援について反対する声が強い国だけに、選挙の結果によっては欧州金融危機の行方に新たな暗雲が発生することになる。

 そしてスペインとイタリアというユーロ圏の3位、4位の国の金融危機だ。特にスペインは、すでに合意された銀行の救済だけでなく(銀行支援では最大1000億ユーロ、約10兆円で合意している)、国そのものへの支援も要請している。国への支援ということになるともちろん資金の問題が生じてくる。何と言っても経済規模が大きいからだ。

 スペインへの支援は、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルといったこれまでの支援額の合計を2倍にした規模とされるし、イタリアがさらに危機に陥ればさらにその倍の資金が必要と報道されている。こうなると最大5000億ユーロの資金を用意することになっているESMができても、資金枠が足りない計算になるだろう。そしてもしここで支援できないなどということになれば、ユーロ崩壊というシナリオが現実味を帯びてくる。

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