欧州も“決められない政治”に悩んでいる藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2012年07月09日 07時59分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 「決められない政治」という言葉は、日本の政治の代名詞になってしまった。野田首相は、何とか消費税増税関連法案の成立に目途を立てたとはいっても、そのほかの法案については目途どころか、それをタネに解散に追い込まれかねない状況になっている。小沢元代表が50人近く引き連れて離党したことで、国会の運営はますます難しくなってしまった。

 ただ、この決められない政治は日本だけの問題ではない。欧州の政治家の覚悟のなさも、国によっては目を覆わんばかりだ。

 周知のように、6月末に開かれたEUサミットでは、これまでになく生産的な結論を得た。これでいったんはユーロ危機が遠のいたという楽観的雰囲気が強まったが、そうでもない。実際、一時は7%という「危険水域」から脱したように見えたスペインの国債利回りは、再び7%に達し、あわてたスペインのラホイ首相はサミットで約束した通り、ECBによる国債の買い入れなどの支援策を実行するよう求めた。しかしラホイ首相は、財政再建の目標についてはむしろ先延ばしを模索している。

 5月に総選挙を行ったギリシャ。結局、どの党も連立政権を構成することができず、6月17日に再総選挙を実施した。前回に過半数を取れなかった、支援受け入れ、緊縮財政の推進派が勝って、ようやくND(新民主主義)を中心に政権が立ち上がった。

 しかし、サマラス首相が打ち出したのは、財政再建目標の先延ばしである。要するに、緊縮だけでは内政がもたないということをEUに訴えたのである。サマラス首相は、初の議会演説でも「成長戦略の重視」を強調している。これがギリシャへの不信感を再燃させているが、それでもギリシャのユーロ離脱という大混乱の火種を防ぐには、EUとしてはサマラス首相を支持せざるをえない。

 5月9日に大統領選挙が行われたフランスでは、現職のサルコジ大統領を破って、オランド新大統領が誕生した。サルコジ氏は保守系大統領として緊縮政策を支持していた。ドイツのメルケル首相との盟友ぶりは「メルコジ」という言葉に表れている。しかしオランド新大統領は、緊縮よりも成長重視の姿勢を取る。その結果、今後のフランスの財政見通しが欧州の不安要因になる可能性もある。

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