1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『偽装通貨』(東京書籍)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『震える牛』(小学館)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo
6月中旬、ある大手紙の一面に巨大小売り企業の新戦略を扱った記事が載った。記事を一読した瞬間、私は嘆息した。記事自体に目新しい要素はなかったが、その内容が大きな矛盾を抱えていたからだ。
巨大企業の戦略は確かに大きなニュース素材に他ならない。だが、その記事を書く前に素朴な疑問は沸かなかったのか。今回の本稿は、自説を交えながら、経済記事とその裏側を読み解く。
私が思わず息を吐き出したのが、6月17日付の日本経済新聞朝刊の記事だ。
『ネットスーパー イオン全国展開 一四年度メド 即日で宅配』
日本一の小売り企業であるイオンに関する記事を要約すると、このような感じになる。
イオンは2014年度をめどに、ネットスーパーを全国展開する。宅配業者と連携することで、近隣に小売店がない「買い物弱者」向けに、ネットで受注した商品を全国津々浦々まで届ける、というもの。
実はこの記事の前に、共同通信もほぼ同じトーンで記事を配信している。2011年9月8日だ。
『イオン 過疎地でも即日宅配へ ネットスーパー広域化』
過疎地域の多い東北でネットスーパーを展開するというのが主旨。2011年11月から青森県でサービスをスタートし、2013年3月までに東北6県をカバーするというもので、イオンはこの戦略を東北以外でも進めていく方針だと共同は伝えていた。
私が想像するに、イオンの広報担当者がこうした方針をレク、あるいは個別に記者を呼び、記事の素材として提供したのだろう。
先の日経の記事は、翌日の情報番組の新聞コーナーなどで大きく取り上げられた。月曜日の朝は紙面が薄く、目玉記事が少ないからだ。チャンネルを替えるごとに、各局のキャスターが日経記事を紹介していたことをご記憶の向きも多いはずだ。
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