地場証券、厳冬の時代(1/2 ページ)

» 2012年06月15日 13時00分 公開
[SankeiBiz]

 株式市場の低迷に加え、高速化を競う最新のネット取引についていけず、事業に見切りをつける中小証券会社が増えている。業界団体の日本証券業協会(日証協)に加盟する証券会社は、平成20年末のピーク時から40社以上減少。「地場証券」と呼ぶ地域に根づいた老舗が廃業したり、他社に事業を譲渡したりするケースが目立つ。東京証券取引所のお膝元で地場証券が集まる東京・兜町も、ニューヨークのウォール街、ロンドンのシティーなど世界の代表的な金融街と並び称されたかつての活気はない。

 「個人相手の対面販売で売買手数料を稼ぐ伝統的なビジネスが通用しなくなった」。十字屋ホールディングス(HD)の安陽太郎社長はそう嘆く。

 79年の歴史を持つ老舗の同社は、3月末で証券会社から投資顧問会社にくら替えし、社名を十字屋証券から変更した。東証のそばにある8階建ての自社ビルは2フロアのみを残し、会議室などに使われている。20年のリーマン・ショック前に120人以上いた社員も、8人まで減らした。

 それでも安社長は「事業は他社に引き継いでもらい、(辞めた社員には)退職割増金も払った。今の株安をみると、早くから(廃業の)準備をしておいてよかった」と胸をなで下ろす。

 日証協によると、今年3月末時点の加盟数は1年前より8社少ない285社と、3年連続で減少。4月以降さらに7社が脱会し、減少に歯止めがかからない。兜町周辺の老舗では、十字屋以外にも室清証券が5月中旬に事業を譲渡し、金山証券も6月に予定している。

 東証近くで喫茶店を営む男性(72)は「東証の売買がコンピューター化され、(取引所で注文をさばく)『場立ち』がなくなって客がめっきり減った」と振り返る。

東京証券取引所のある兜町ビルでは地場証券の減少が続いている。左が十字屋証券ビル=東京都中央区
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