ソニー株式は“モニュメント銘柄”に……忘れ去られるか、崖っぷち相場英雄の時事日想(1/4 ページ)

» 2012年06月14日 08時01分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『偽装通貨』(東京書籍)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『震える牛』(小学館)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 先週の株式市場の急落局面を伝えるニュースの中で、ソニー株式について触れた記事が多かったことをご記憶の向きもあろう。同社固有の悪材料があったわけではなく、市況全体が悪化する中で連れ安となり、心理的な節目を下回ってしまったからだ。

 だが、このところソニー発の情報で株価が動く機会が減っているのではないか。同社株式が“モニュメント銘柄”になったと言ったら大げさだろうか。ソニーはもはや株価の節目でしか扱われない企業になったのか。

“ソニー・ショック”は今や昔

 今から9年前の2003年4月25日。当時、通信社の株式市況担当の記者だった私は、早朝から多忙を極めていた。

 なぜなら、前日24日の夕刻、ソニーが大幅な減益見通しを発表し、同社株式の下落が必至だったからだ。

 金融機関のディーラーやブローカーが読む専門記事の予定稿作りのほか、地方紙やテレビ局向けのマスメ記事の穴あき原稿を多数用意し、東証の寄り付きを待った。

 いざ取引が始まると、当該のソニー株式は大量の売りを浴び、手元の株価モニターには「売り気配」の表示がつきっぱなし。気配値がどんどん切り下がっていった。

 連れて他の電機株にも売りが波及し、値がさ株の影響度が高い日経平均株価も急落し始めた。

 当時、東証の兜記者クラブでは、私が座る通信社のブースのほか、テレビや在京紙の席のあちこちから「こりゃ、ソニー・ショックだな」とのつぶやきが漏れ出した。

 予想外の業績修正とともに、ある程度各社ともに準備を進めてきたが、気配値の下げピッチが速く、担当記者たちにとっても“ショック”だったのだ。

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