南相馬市で中華そばを食べ、住民の“絆”を感じる相場英雄の時事日想・南相馬編(3)(1/4 ページ)

» 2012年06月07日 08時01分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『偽装通貨』(東京書籍)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『震える牛』(小学館)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 5月12日、私は福島県南相馬市を訪ねた。大震災の発生から1年以上が経過したが、つい先月まで厳しく立ち入りが制限されてきた同市小高区は、あの日から時間が止まったままの状態だった。厳しい現実と直面する中で一カ所だけ心が和らぐ場所があった。小高区の人々の社交場とも呼べる地元食堂だ。

どうしても訪ねたかった場所】

 昨年6月、私は当コラムで新潟県三条市の國定勇人市長にインタビューした(関連記事)。三条市は震災発生後いち早く南相馬市からの避難者を受け入れた自治体のひとつだ。三条市の避難者への取り組みに関しては、同市長が綴るブログを通じて常に最新情報をチェックしていた(参照リンク)。その中で、小高区にあった地元食堂を市長が訪れたとの記述があった。

 私は無類の麺好きだ。麺好きが高じて『みちのく麺食い記者シリーズ』(小学館文庫、双葉文庫/「水曜ミステリー9」テレビ東京系)というシリーズ物のミステリーまで作ってしまった。

 國定市長の綴ったブログを読んで以降、どうしても双葉食堂の麺を味わいたいと思い続けてきた。

 『みちのく麺食い記者シリーズ』を取材・執筆する間、私は東北各地の地元食堂に足を運び、現地の人に交じって麺を食べ続けた。全国的に有名なご当地麺の類いも好きだが、何の変哲もないラーメン、あるいは中華そばが一番の好みだ。

 私自身、新潟県の片田舎で育った。ファミリーレストランなどない時代、カツ丼やラーメン、日本蕎麦などなんでもそろった地元食堂に行くのが楽しみで仕方なかった。

 醤油味、塩味など、東北各地にはさまざまな中華そばがある。それぞれの街には、その街の歴史とともに歩んできた麺があるというのが、取材で得た感触だ。

 双葉食堂も地元民に愛され続ける麺を提供してきたに違いない。そう考えて自家用車を南相馬市鹿島区に向けた。

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