急伸するソーシャルゲーム市場ソーシャルゲームのすごい仕組み(1)(3/3 ページ)

» 2012年05月11日 08時00分 公開
[まつもとあつし,Business Media 誠]
前のページへ 1|2|3       

若者中心から全世代に

 急伸するソーシャルゲーム市場だが、実際のところ、ユーザーの年齢構成比はどうなっているのだろう?

 従来は、ソーシャルゲームは10代から20代の若年層のものというイメージが強かった人も多いはずだ。しかし、すでにその状況は一変している。

 次図をご覧いただきたい。2009年から2011年の3年での比較が行われたものだが、たとえば30代以上の層が40%近くを占めるなど、現在では幅広い年齢層にソーシャルゲームは受け入れられている。その拡がりは、従来、ゲーム専用機で遊んでいた人々を超えて進んでいるといってもいいだろう。

GREEとモバゲータウンの利用者の年齢構成(両社の決算資料より)

 如実な例はコナミが提供する「ドラゴンコレクション」だろう。すでに登録会員数は550万人を超えており、同じ「ドラゴン」を冠したドラゴンクエストのシリーズ第1作(1986年発売・約150万本)を上回っている。

 かつて、こういった携帯電話で遊べるゲームを指して「もしもしゲーム」などと揶揄(やゆ)されていた時期もあった。重厚なストーリー、美麗なグラフィックを備えた家庭用ゲームに対して、いわば「おまけ」のような扱いを業界内でも受けていたモバイルゲームが、ソーシャルな要素と組み合わされることによって、一躍主役に躍り出た、といってもいいだろう。

 小さな画面で、専用機に比べるとずっと貧弱なグラフィックで楽しむこれらのゲーム。電車内で遊ぶことも想定し、音すら出ないのになぜ人々が夢中になるのか? 後で詳しく見ていくことになるが、SNSで私たちが親しむことになった、さまざまな要素―たとえば友達が増えていき、その過程や、その数値が可視化されることや、友人が自分の日記を見たあしあとが残ったり、「いいね!」ボタンが押されることに対して喜びを感じたりなど――ーが、ゲームという遊びと組み合わさることによって、これまでの1人で遊ぶゲームと比べ、より刺激的で楽しい体験を得られるようになったというのが大きな理由だろう。

 しかし、他者との交流、対戦を目的としたゲームなら他にもある。MMORPG(多人数同時参加型オンラインRPG)やFPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)などはその筆頭格だ。両者ともリアルに再現された3次元空間で、精細なグラフィックや迫力に富んだ効果音とともに、しかもゲーム内で他のプレイヤーとともにまさに没入感たっぷりにゲームを楽しむことができる。

 本章の冒頭に挙げたブラウザゲームもそうだ。2011年上場を果たし大きな注目を集めた、米国のソーシャルゲーム大手Zynga。彼らが提供するFarmVilleは、テレビゲームで一世を風靡したシム・シティのようなグラフィックや効果音とともに楽しむことができる。街作りをモチーフにしたこのゲームは、Facebook上の友人・知人と協力しながらゲーム内の通貨(仮想通貨)を稼ぎ、それを元に仮想空間上の街を大きくしていくのが目的だ。

 けれどもガラケーやスマートフォンで楽しむソーシャルゲームは、それよりも、もっと手軽に誰でも参加することができるようになっている。ゲームの導入部ではまさに「手取り足取り」といっていいほどの体裁のチュートリアル(練習ステージ)が用意され、ゲーム初心者でもガイダンス付きで戸惑うことなく導入部を楽しめるようになっている。3Dゲームに比べれば求められるハードウエアのスペックも低い。そこ(バーチャル空間)での立ち居振る舞いと必要な操作も一見すると単純だし、ゲーム開始当初は1人プレイでそれなりに楽しめるようになっていることがほとんどだ。その敷居は圧倒的に低い。

 こうして、先に紹介したドラゴンコレクションなどのソーシャルゲームも提供するコナミでは、ついにソーシャルゲームの売り上げが、従来のパッケージゲームのそれを越えた。ビジネス的にも無視できない存在となったソーシャルゲーム。次にどんなゲームがどんな理由で人気を博しているのか、いくつかの例を見ていこう。(次回に続く

ソーシャルゲームのすごい仕組み

 この連載は4月10日に発売された『ソーシャルゲームのすごい仕組み』(アスキー新書)の第1章から抜粋、編集したものです。

まつもとあつし氏のプロフィール

ネットベンチャー、出版社、広告代理店などを経て、現在は東京大学大学院情報学環博士課程に在籍。DCM修士。ネットコミュニティーやデジタルコンテンツのビジネス展開を研究しながら、ITを切り口としたコンテンツビジネスの取材・コラム執筆を行う。著書に『生き残るメディア 死ぬメディア出版・映像ビジネスのゆくえ』(アスキー新書)、『スマートデバイスが生む商機見えてきたiPhone/iPad/Android時代のビジネスアプローチ』(インプレスジャパン)、『スマート読書入門』(技術評論社)など。


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.