1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『偽装通貨』(東京書籍)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『震える牛』(小学館)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo
本コラムでは、なんどか東日本大震災関連の書籍を紹介してきた。今回も優れた作品の1つに触れる。『悲から生をつむぐ 「河北新報」編集委員の震災記録300日』(寺島英弥著・講談社)がそれだ。被災地仙台のブロック紙、河北新報社の名物記者が綴った記録の中には、地域を愛し、そこに生きる人たちの様子を伝えるブレない記者魂がある。被災地外の人はもとより、これから記者やライターを志す向きには必読だ。
本書は、寺島氏が震災直後から綴り始めたブログ「余震の中で新聞を作る」やこれを転載した講談社のWebサイト『現代ビジネス』に加筆修正されたものだ。
「余震の〜」は昨年から多くのメディアで取り上げられたことから、同氏やブログの存在を知っていた向きも少なくないはずだ。
筆者自身、同氏の穏やかな筆致に惹かれ、ブログを継続的に読んできた。穏やかな筆致とは、文字通り、「〜です」「〜ます」調でルポを書いてきた同氏の文体を指す。
筆者自身も東京からなんども被災地取材に赴いた。現地の壮絶な様子を伝える際はどうしても文章や表現がきつくなってしまう。
壮絶な生還を果たした人、あるいは家族・友人を失った被災者の話に接するにつけ、彼らの思いをストレートに伝えようと力んでしまったからだ。
一方、寺島氏は違う。悲惨な話題に触れる際も、「〜です」「〜ます」との伝え方を貫き、悲惨な状況を和らげる努力をしている、と感じた。筆者は「余震の中で新聞を作る」に最初に接したころ、そう感じこれを読み続けてきた。
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