サービスサイエンスにおいて、我々はサービスを次のように定義しています。
「人や構造物が発揮する機能で、ユーザーの事前期待に適合するものをサービスという」
この定義にはいくつもポイントがあるのですが、今回は代表的なものを2つ挙げます。まず1つ目は、「人だけでなく、構造物もサービスを提供できる」ということです。例えばコインランドリーは、明らかに人はいませんがサービス業になります。銀行ではATMがこれに該当するかと思います。
そして2つ目、これが最も重要なのですが「事前期待に適合するものをサービスという」ということです。では、事前期待に適合しないものは何なのか? それは「余計なお世話」であったり「無意味行為」「迷惑行為」といった認識をされてしまうものになります。
こういったサービスの定義をしっかりと組織全員で共有すると、その後のサービスの議論が格段にしやすくなるのです。この「サービスの定義」を理解した上で、再度大垣共立銀行のサービスに視点を戻してみると、このサービス改革がいかに「サービスの定義」をとらえたものであるかが分かります。
頭取の土屋氏が揚げた「我々は金融業では無くてサービス業だ」という言葉ですが、これをサービスの定義を踏まえて解釈してみると、例えばこんな理解になるかもしれません。
「我々はスタッフや銀行組織、ATMや銀行空間などをフル活用して、お客さまの事前期待に適合する機能を発揮できるよう、サービス変革しなければならない」
そして、サービス変革の結果生み出されたサービス(年中無休、移動式ATM、説明員配備など)は、お客さんの事前期待に適合した気の利いたサービスとなっています。その結果、地方銀行ながら、毎年全国でトップクラスの顧客満足を獲得することができているのだと思います。
ただし、今回挙げたサービスの例は「共通的事前期待」に応えるものが多いようです。今後、「個別的事前期待」や「状況で変化する事前期待」などに応えるサービスを提供することで、さらに評価の高いサービスを提供できる可能性は十分にあると思います。これから大垣共立銀行が、十六銀行や他行とのサービス競争の中でどんな新しいサービスを生み出すのか、着目してみたいと思います。(松井拓己)
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