背景を知る。原理をさかのぼる。「こんなことか!」とひざを打つ。それだけじゃない。大人の科学の付録は本格的ゆえに“実用”も魅力。『大人の科学マガジン Vol.25(二眼レフカメラ)』ではこんなこともあった。
「二眼レフカメラには、『今時、フィルカメラ?』という意見もありましたが、読者の方からは、『これぞ、大人の科学』というコメントをたくさんいただきました」
フィルム装填の二眼レフカメラは、固定焦点だが羽根レンズ(羽根状の板が花びらのように開閉)も再現。立派に作動するのがウケて、女性読者も飛びつき17万部を突破。プラネタリウム(Vol.09=50万部)やテルミン(Vol.17=20万部)など大ヒットの影に必ず女子がいるという。彼女たちは実益を兼ねた付録を好むという。
ちなみに編集部には女性部員が2人いる。美顔器は無理ですか?
「作れますが……玩具という枠から外れて医療器具扱いとなると、法律の壁も、製造工場の壁も立ちはだかってきます」
同じ理由で残念なのが、ダイヤル式電話器。“製品の原点”がテーマの同誌にとって、モジュラージャックにつないで通話できる電話の付録は夢だろう。だが、品質の悪い電話器が公衆回線に入るとノイズが出てしまうので、規制されているという。この規制を乗り越える高性能ふろくが開発できるまで、モジュラージャックは存在しているだろうか?
「『ガイガーカウンターを作って』という声も地震後にありました。しかし、作れても計測誤差はどうするか? 『付録だから……』では許してくれません。地震の後には計測さえもできなくなってしまいました」
付録の実用に当たっては、大人の余裕を持って遊ぼう。デジタル時代に失われがちな実感を取りもどすくらいでいいのだ。“心のシャフト”が、デジタルとアナログに行ったり来たりできるように。
アナログカメラでは投稿も画像調整も共有もできない。その代わりシャッターを切った、露光したという実感が持てる。アナログ音楽ではショップからの曲買いもシャッフルもできない。その代わりレコードやCDのような圧縮ではないナマの音源を楽しめる。
心のシャフトをずらして便利一辺倒から脱出。それが“永遠のコドモオトナ”でいる秘けつである。
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