なぜ人は相手の気持ちが分からないのか吉田典史の時事日想(1/4 ページ)

» 2011年11月11日 08時01分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

著者プロフィール:吉田典史(よしだ・のりふみ)

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2005年よりフリー。主に、経営、経済分野で取材・執筆・編集を続ける。雑誌では『人事マネジメント』(ビジネスパブリッシング社)や『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)、インターネットではNBオンライン(日経BP社)やダイヤモンドオンライン(ダイヤモンド社)で執筆中。このほか日本マンパワーや専門学校で文章指導の講師を務める。

著書に『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)、『あの日、「負け組社員」になった…他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)、『いますぐ「さすが」と言いなさい!』(ビジネス社)など。ブログ「吉田典史の編集部」、Twitterアカウント:@katigumi


 忘年会を意識する時期になった。今回は、私が2007年暮れに開いた忘年会で起きたトラブルから、会社員が学ぶべきことを紹介したい。

 会には、主要出版社(売り上げ、社員数などで業界の10位以内)から5人の編集者、そして中小出版社(この記事では、社員数100人以下とする)から15人の編集者が参加した。平均年齢は、30代後半くらいだった。20人はこれ以前に面識があったのは数人で、15〜18人が初対面だった。

 結論から言えば、この会は"最悪"だった。居酒屋で19時からスタートし、22時で終えたのだが、20時くらいからは口論になった。それは、「主要出版社5人VS. 中小出版社15人」という図式だった。

 口論になった大きな理由は、主要出版社の人が、中小出版社のことを知ったかぶりで話すことだった。

 特に労働条件(基本給、残業代、家族手当など)、人事異動(配置転換)などの違いを本当の意味では理解していない。それらを口コミで得たというレベルだった。ところが、双方の差がないかのように話し、最後は「賃金などの差は努力すれば埋まる」と口にした。このあたりで、中小出版社の人たちが怒り始めた。

 激しい口論になったのが、残業代。ほとんどの出版社では編集者は雑誌にしろ、書籍にしろ、残業が多い。その際、その労働に対し、賃金が支給されないことがある。いわゆる、サービス残業だ。これは法的に問題なのだが、一部の企業では行われている。

 会に参加した主要出版社には、いずれも労働組合があった。執行部は経営陣と協議の末、残業代について一定の「合意」を得ていた。会に参加した5人(それぞれ別の会社。いずれも労働組合員)のうち2人は、会社が残業代を支給する1カ月の上限が60時間だった。残り3人のことは、分からなかった。

 上限が60時間の場合、例えば、57時間の残業をすれば、会社としてその分すべてを支給する。61時間の場合は、その1時間分が支給されない。その分はサービス残業になり、これは法的に問題になる。2人は、毎月60時間の分までは支給されていた。仮に時給2000円とし、60時間の残業をすると、月に12万円。年間で、144万円となる。

 60時間に達しない月の場合、本人が「操作」をして達するようにするという。PCからタイムカードを入力する場合、退社時間を遅らせて、残業時間を増やすのである。これは不正に見えるが、2人いわく「大半の編集者がしている」という。上司や人事部は、何も言わないようだ。

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