コストとメリットの関係は? 再生可能エネルギーの未来松田雅央の時事日想(1/4 ページ)

» 2011年11月08日 08時00分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

著者プロフィール:松田雅央(まつだまさひろ)

ドイツ・カールスルーエ市在住ジャーナリスト。東京都立大学工学研究科大学院修了後、1995年渡独。ドイツ及び欧州の環境活動やまちづくりをテーマに、執筆、講演、研究調査、視察コーディネートを行う。記事連載「EUレポート(日本経済研究所/月報)」、「環境・エネルギー先端レポート(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社/月次ニュースレター)」、著書に「環境先進国ドイツの今」、「ドイツ・人が主役のまちづくり」など。ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員。公式サイト:「ドイツ環境情報のページ


 ソーラー、風力、バイオマス、水力など、自然エネルギーを中心とする再生可能エネルギーが緊急のテーマとなっているのは周知のとおり。日本でもその必要性は広く認められているが、開発コストの高さや安定性の問題からエネルギー供給の主軸とするには懐疑的な意見が多い。それでは世界の先端を行くドイツは、コストとメリットのバランスをどう見積もっているのだろう。

秤にかけるなら

 ここではドイツ連邦環境省の報告書「再生可能エネルギー開発のコストと利用」を基に話を進めたい。

 ドイツの再生可能エネルギー開発は環境省の他、経済省、教育・研究省などが取り組み、プロジェクトによって協働作業が行われている。あえて、どの省庁がイニシアチブを握っているかと問われれば、やはり環境省となるだろう。これは国として第一に「環境のための再生可能エネルギー」と考えているからに他ならない。

 しかしこれは「経済を無視してでも環境を優先する」こととは違う。逆に「先進的な環境政策こそが経済発展の原動力になる」という発想が根底にある。ほんの10年前ならば奇異な考えと受け取られただろうが、時代は変わり、こういった主張が説得力を持つようになってきた。環境産業を育成し、環境技術の研究・開発で世界の先端を行くことが莫大な経済的メリットをもたらすことに疑いの余地はない。

 報告書の冒頭に、再生可能エネルギーの開発・導入コストとメリットのバランスを模式化した図がある。ドイツでは1990年代から再生可能エネルギーの利用拡大が、企業、家庭、社会にどのような影響をもたらすのか検討されてきた。そしてその議論は現在も終わっていない。

 複雑な要因が絡み合うため経済的な分析は非常に難しいが、主な要因についてコストとメリットを整理したのがこの報告書である。

再生可能エネルギー(EE)開発のコスト(左)とメリット(右)のバランス(出典:ドイツ連邦環境省の報告書「再生可能エネルギー開発のコストと利用」)
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