56点の展示品から3つのメッセージを私は感じた。まず1つ目は「適正な灯りのデザイン」。
震災後の電力不足で、被災地だけでなく首都圏でも灯りが乏しくなった。電力のありがたさ、貴重さを改めて感じた。パナソニックのLED電球はクリア素材で光源のLED構造を見せたのが新鮮だ。東芝のLED防水ライトは、懐中電灯らしくないデザインで枕元に置けるし、立てて光らせるとその光輪が間接照明にもなる。
山田医療照明の手術用照明器は、高演色のLEDを光源として明るく省電力なだけでなく、従来のハロゲン灯であった発熱を抑え、赤(=血)を正確に映す。大與のお米のろうそくは、無香料、無着色、純植物性で米ヌカから採取したロウで作られた。垂れも湯煙もほとんど出ない。
LED時代を象徴する構造と照明美。命を適切に照らす灯り。人にやさしい灯り。灯りはそもそも人工的なものだが、人の心に一歩も二歩も近付いた印象があった。
2つ目は「土をめぐるデザイン」。
日鐵住金建材の斜面安定化工法は、木の根っこをヒントにした“人工根”。これを斜面に植えこみ、森林保全と斜面の防災の両立を図る自然工法。
これまで私たちは森林を根こそぎ切り取り、コンクリートで斜面を覆ってきた。醜くしてスマなかったな、自然よ。
相田合同工場の踏み鋤は、家庭菜園用の“デザイン農具”。形状がユニークだし、仕上がりに職人技の美しさがある。使うのがモッタイナイ。展示したい農具はとても新鮮。
未曾有の自然災害に遭ったおかげで、私たちは自然とどう付き合うか考え出した。自然ともっと自然に付き合おうぜ。
3つ目は「ソーシャル・デザイン」。
本田技研工業のカーナビゲーションシステム「インターナビ」は、震災翌日の3月12日から“通れる道”の情報を公開した。インターナビ会員からの実際の通行情報「フローティングカーデータ」をリアルタイムに集めて、通行実績をナビ上で公開。みんなで通れる道を知らせ合う仕組みだ。似た仕組みを作って、物資の供給・集積情報やボランティア情報が見えればもっといいな。
走行情報が人と人をつないだ。刻々と変化する光にはみんなの善意が生きている。情報デザインが人と人をつないだ一瞬。ソーシャルがデザインと融合したHONDAのナビ、私は大賞に最も近いと感じた。
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